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映画、漫画、革のブログです

世界観は最高なのにシナリオががばがばすぎてもったいない【#ザ・クリエイター/創造者】

ちょっと靴関係のイベントがあり東京に出まして

まぁそっちはちょっと思いのほか私のメンタルが破損していて早々に離脱したのですが、

そのあとパンツがダメになったジャケットに合わせる代わりのパンツを作りにスーツやに行って、2本とるならいけますが・・・といわれて断念

 

最後に映画でも見て帰ろうかと、気になっていたザ・クリエイターを見に行きました

 

タイトルの通り酷評寄り

凄く良かったと思う部分もあるんだけど、あまりにも脚本が残念だった

残念だったけどなんか嫌いになれないそんな変な映画でした

ということで行きます

 

 

あらすじ

ロボット工学が発達し、AIによって人と変わらぬ感情を持ち人ともに生きるロボットたちが共存する世界

 

しかし、AIが米国で核爆発を起こしてしまったことにより、西側政府はAIを危険なものとして製造を禁止、いまだにAIの製造を続けるニューアジアに対し戦争を仕掛けるのだった

 

ある時、アジアの海辺で臨月の女性「エマ」と生まれる子供について語り合う「ジョシュア」

そこを襲撃する海兵隊

ジョシュアは西側のスパイだった

エマにそのことがばれ、エマは船に乗り海岸を離脱する

しかし、エマの乗る船は、大気圏から地上をミサイル攻撃する西側の大型兵器「ノマド」の攻撃により行方不明になり、ジョシュアは失意のうちに西側に帰国する

そして5年後

ジョシュアは、ニューアジアのAI設計者「ニルマータ(クリエイター)」とニルマータによって作られた秘密兵器「アルファ・オー」を探す軍上層部によりまたニューアジアに潜入する

実は生きていたエマを探すために

ニルマータの秘密基地に潜入する、ジョシュア、そこで彼が見たのは、現在の技術では製造できない外見6歳の子供型のAIだった

 

と、そんな感じ

 

ガジェットのデザイン、ロボット(AI)と人間が共存するニューアジアの描写が素晴らしい!

 

本作の根幹であり、肝となるのはやはりここだと思う

もうとにかくメカニックのデザインが素晴らしい

西側政府の大型兵器、ノマドの洗練されたデザインもそうだし

タクティカルアーマーも渋い

 

そして、人と共存するAI達

アジア、特に東南アジアをその舞台にすることで、自然に溶け込み、宗教(仏教)を理解し、衣装に身を包むAIというビジュアルにすごい刺激される。

メカメカしいAIと、渡辺謙演じるハルンのような、人型のAIがあるのは世代なのかな?

どちらもいいアクセントになっていて非常に良いです

 

キャストたちの演技も抜群

私的にはTENETぶりに拝見した主演のジョン・デイビッド・ワシントン

 

belphegor729.hatenablog.com

彼は抜群に良かった

TENETの時とは違い、ちょっとチャラい感じ

でもその中に、子供型AI「アルフィー」への愛だったり、エマへの愛だったり

複雑な感情をうまくコントロールしていて素晴らしかった

 

エマ役のジェンマチャンもいいですね、この方はエターナルズぶり

 

belphegor729.hatenablog.com

 

渡辺謙は言うまでもなく、監督が日本好きだからか結構日本語しゃべらせてもらってますね。しかし日本語、英語、他のアジア言語が普通にまじりあう会話は本当に成立するのか・・・

 

最後に、やはり一番良かったのはアルフィー役のマデリン・ユナ・ヴォイルズ

 

凄いなぁ子役ではあるものの、これが初演技なんだ

でもすごい多才そう

実は終盤「彼女」といわれるまでずっと男の子だと思っていたんだけど

髪の毛あるとすごくかわいいですね

 

とにかく感情のない表情の序盤から、徐々に経験と知識を取り込み感情豊かになっていくアルフィーを好演していて

こいつぁやべぇ子役が出てきたなと

将来が楽しみです

 

良かったところはこんなところ

次からダメだったところ。正直たくさんあります

 

宣伝が酷い

公式サイトがひどすぎる

公式が適当なこと言うの本当に良くないと思うんだよね

フェイク1

ジョシュアの紹介だけど

別にAIを憎んではいない。少なくとも憎んでいるという説明は全くないですね

憎んでいるのは現在の潜入作戦時の上官

これについてははっきりと、ミスリードではなくちゃんと考えて文章考えていないと断言できる

フェイク2

今度は公式のあらすじ

あまりにも簡略化しすぎていて愕然とするけど

人類とAIの戦争ではない

AI殲滅派とAI共存派の戦い

これもミスリードをする意味が全くないので、日本側のスタッフのやる気がないだけ

実際勘違いして混乱しているSNSの投稿もあったし、思ってたんと違うという声もあった

ちゃんと説明すればいいのに、人類vsAIなんて腐るほどある

AIっていうのは人種差別のメタファーなんじゃないのかね

AIは人間じゃないというセリフを白人に吐かせるのは

黒人は人間じゃないとして奴隷にしていた大航海時代のメタファーじゃないんかね

もしくは種として劣っているとしてユダヤ人を殲滅しようとしたナチスドイツか

だからロボット僧侶は奴隷からの解放を説いていたのでは?

こういうの本当に良くないよ

なんだよ衝撃の事実って

どれのことを言っているんだよ

少女を守り抜くともぶっちゃけ誓っていないぞ。実質的にそういう状況にはなっているけど

雑な説明に終始していて宣伝から愛を感じないのが本当に残念

愛がテーマの作品なのに

 

設定ががばがば

とはいえこの作品の魅力を大きく損なっているのは間違いなく脚本

物語の転となる部分が全部確保側、襲撃側の不注意による反撃

 

捕虜(ジョシュアの上官)を連行中に警備が気を抜いて殺されるわ手錠はすぐに外れるわ、なんだったらすぐ手元に押収した武器があるわで護送車ごと強奪

ここで捕虜が逃がさなければ起きなかったことしかないぞ。

お前生存闘争しかけられとるんぞ。真面目に見張れや

指名手配されているのに割と普通に街中を歩けちゃってるジョシュアもそうだし

巨大戦車に襲撃されるシーンがあるんだけど

爆弾一つごときで戦車1台全損するのもおかしいし

全損できるのにもう1台にも仕掛けようとしない

 

ノマドの存在もだいぶリアリティを損なっている

存在がフィクションだ、ということではないですよ

ストーリーに無理が生じている、ということですね

だってさ、超上空から好きな場所狙って攻撃できるんだよ

あんなでっかい兵器持っていて少なくとも5年以上戦争継続してるっておかしいでしょ

ニューアジアの都市全部やっちゃえばいいじゃん

もしかしたらニルマータの基地だけ攻撃していて都市には攻撃していない

という理屈なのかもしれないけど

でもガンガン民間人殺してるよね。

イスラエルみたいに一応の避難勧告をするならまだしも

奇襲で民間人ごと虐殺は普通に戦争犯罪

やっていることはハマスと同じですよ

まぁ西側とニューアジアしか出ていないし、AIのスタンスで分かれているようだから本当にこの2か国しかなさそうではあるので戦争犯罪を非難する外野はいないのかもだけど

(一応終盤で西側の市民デモは一瞬移りましたけどね・・・)

非難する外野はいないんだから民間人ちょっと殺すも全部殺すも同じだよ

どのみちAIを殲滅させるのは変わらないんだからさ

ノマドがあり、AIを殲滅するのに民間人への被害を考慮していないのに戦争が終わっていない、というのがすごくリアルがないなと感じてしまうんです

 

そもそもの土台に無理がある

これに関しては多分に好き嫌いも入ってくるので、だからダメなんだ

というとちょっと違うんだけど

そもそもの戦争の始まりが私の中でひっじょーにびっみょー

なんですよ

AIが核爆発を起こしました。だからAIを殲滅します

ってのが思考の飛躍がすごすぎて

もし仮にAIによる攻撃だったとして、

AIにロボット三原則を仕込まなかったのは人間側では?

そこすっ飛ばして破棄します、殲滅します、我々のいうことを聞かないニューアジアに戦争を仕掛けます、って

いやいやいや、無理がありすぎでしょ

アジアではそんな事件1件も起きていないし、西側だってその1回でしょ?しかも事件なの?事故でしょ?

てめぇの国で起きた事故で、なんで我々の内政に干渉してくるんだよって話でしょ

良き隣人に対して「彼らは敵です、破棄してください」とか傲慢にもほどがある

ニューアジアが飲めないのは当たり前で、そんなので戦争吹っ掛けられたらたまったもんじゃないよね。

たまったもんじゃないので、もっと西側の戦争犯罪を強く非難する論調を出してほしかった

西側の戦争犯罪や、その象徴足る上官の非人道的な行動に対する非難の色が作中で全く見られないのがすごくフラストレーションでした・・・

作品内で信賞必罰を明確にしてほしい人なので、これは好き嫌いですけどもっと上官はむごたらしく死んでほしかったし、ノマドがああなった後西側がどうなったのかも見たかった。

ぶっちゃけあんな簡単に領土内に侵入してこられて(飛行輸送機で強襲は百歩譲って見逃しても、巨大戦車の侵入は国境警備がガバすぎるとしか言いようがない)

ノマドがなくてもニューアジア敗北必死じゃね?と正直思うんですよねぇ・・・

 

 

最後に

なんかいいところたくさんあったのに、それ以上にダメなところがたくさんあってフラストレーションがすごいたまった。

もっとこうすればいいのに、こうなっていればいいのにって

これはネタバレなので最後に持ってきたんだけど

 

 

 

ラスト、ジョシュアとエマの結末はロジックがしっかりしていて凄くよかった

序盤の人間の死体の脳から情報を取得して、AIに移植する装置が伏線となり

西側はニルマータがエマであること、すでに植物人間状態であることを知っていて

でも脳はフレッシュな状態だから、上記装置でエマの知識をデータ化することができる

本当の目的はエマの知識だった、というのも見事

ノマドの一室にAIのボディが大量に保管されていたのはあれなんなんですかね

捕獲したAIから組織のアジトの情報を取り出していた、という理解でいたけどあってるのかしら

あの中にエマコピーがいたのはできすぎだけど、

起動に時間がかかっておいて行かれた時点で、

あ、これジョシュア助からんな。助からんけどここでエマと再会するんだ

粋なことするなぁとちょっとしんみり、実際にそうなってほろっとしてしまいました。

 

正直あのシーンがあるだけで嫌いになれない

 

ポストクレジットシーンで成長したアルフィーが出ていたら加算方式で100点出せた

 

でも、本当に減点方式だとあっという間に0点行っちゃうんだけど

加算方式だと結構いい線いっちゃう

 

そんな愛憎入り混じった複雑な感情になった不思議な作品でした

好きだなぁ。もっとこうすれば良くなったというのに。でも好きだなぁ

でも万人には勧められないなぁ。