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かげきしょうじょ7巻

久しぶりに漫画1巻ずつ感想記事にしたためる程度にはドハマリしているかげきしょうじょなんですが

個人的にこの7巻が一番の問題作だと思っています

 

7巻の終わりから8巻にかけて

本編の内容も今までで一番ハードではあるのだけれども

それ以上にえぐいのがスピンオフ

さらさのおねえさまである本科生中山リサのスピンオフではあるものの

彼女の目を通して見る、野島聖の退場の物語

リサにとって、好きになれない性格で、でも誰よりも真摯に紅華を愛し

演技に打ち込んでいることを知っている聖

 

しかし、この道を続けていくことが

自分一人で完結していることではないこと

回りのひとを巻き込まないと続けていけないことを

 

残酷に、冷酷に見せつけてきます。

実はあっさりとではあるけど山本さんの最初のエピソードでも語られていたことではあるのだけれど

芸の道はお金がないと続けられない。

 

誰よりも紅華で輝けると自負していた彼女は

でも紅華を愛しているからこそ去る

 

このエピソードを読んでから見返すと、彼女の一言一言がとても重いんですよね。

特にジュリエット役にてをあげるか悩む愛ちゃんへのアドバイスが

たぶん、もうこの頃には自分がスタートラインにすら立てないことを知っていたんだろうね。そう思うと辛いし、彼女なりの愛ちゃんへの激励だということもわかる。

 

たぶん、本編、そして100期生では描きづらい、歌劇学校の負の面というか

選ばれて入学してきた人たちの中の”成れなかった”人たちのエピソードを

99期生として背負わされていると思うんだよね

皆銀橋を歩くことを目指して努力するけれども、その多くは脇役のまま終わっていくというきつい現実。

それを一足早く物語から退場していく先輩たちで見せているんだね

 

まぁでもそんなことどうでも良いくらい辛いね。。読んでいて胸が苦しくなる

でも何度も読んじゃう。

歌劇団入団生が39人しかいないことを聞いたリサの表情も辛いし

本編でも描かれていた初舞台で歓喜の横顔に、実は涙を浮かべていたことをリサは知っていたことも

全部が全部辛い

何よりも、迎えに来た悠太に泣きながらだきつくシーン

聖は2年間誰にも本心を打ち解けることなく孤独だったんだろうなと

学生時代のいざこざが彼女なりのトラウマになって

本当の自分を出すのが怖くなっていたんだろうなって

嫌われる人を演じることで、嫌われたのは本当の自分じゃないと予防線を張るやつ

そこまで頑張ってきたのに、夢に向かって走れないの本当に辛い・・・

 

小野寺先生が山田さんに訴えた「やめたら二度と戻れない」という言葉もまた重くのし掛かる。

 

過去のエピソードが別のエピソードにこだまのように響いてくる

本当に良くできてるよね・・・

 

そして、嫌っていたからこそ聖の事を一番よく知っていたリサのモノローグで終わるのも本当に様式として美しくて

 

また99期生の初舞台が皆同じ髪型同じコスチュームで引くほど没個性なんですよ

これだけキャラがたっていた99期生も、きっと100期生も

卒業すると大勢のうちの一人、今度は歌劇団員としてスタートラインに横並びになってしまう。

ここで志半ばに道を降りてしまったルームメイトに向けた彼女の誓いも叶うかどうかわからない、叶えるのが難しいのではないかと思わせながら”かげきしょうじょ”という舞台から去っていく

凄いこう、諸行無常だな、って思うんですよね・・・

 

アニメEDの最後のカット、顔を描かず個性を消したこの絵も

まだ一人ひとりの個性ない発展途上の乙女たちという事を表しているのかなとおもったり
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で、あまりにも好きすぎて聖エピソードだけで1500文字も使ってしまったのですが

実は本編も8巻の前振りな感じで、祖父の入院という形で大きく動きつつも

個人的には杉本さんがなぜティボルトに成れなかったのか

安道先生と大木先生に聞きに行くシーンが何度も読み返すほど好きなエピソードなんです。

 

まず本科生との会話のなかで静かにさらさの演技を誉めるシーンで始まりつつ

安道先生に自分の何がダメだったのかを聞きに行くシーンを回想する

安道先生10年前から生徒を励ますの下手だったなと思いつつ

 

舞台は天才だけを求めていない、というアドバイスは結構はっとさせられる話だったし

彼女はモーツァルトだと羨んでいても、実際は彼女もサリエリだった

天才だと思って羨んでいるが、その実力は影ながら血の滲むような努力に裏付けされたものであることが往々にしてあると言うことですよね

特に今回の寸劇では、杉本さんの得意とするバレエは加点対象になりづらいですしね。

そこについては、もちろん天賦の才もあるけれども、幼い頃に日舞で鍛えられた表現力の下地があるさらさにアドバンテージがある内容でもあった。

 

ただ、紙一重だったよっていう慰めが、その紙一重をものにできるのがモーツァルトだとおもっている杉本さんには重くのし掛かるのもさすがのシナリオ構成力。

そのあとに、同じ苦しみを杉本さんよりも1年長く味わっている本科生委員長の竹さんから励まされたり

山本さんに励まされたり

かげきしょうじょって、同期の人間関係に助けられる話も多くて、そういう所も良いですね。

そして、最後に大木先生に自分に足りなかった事を聞いたときに

それが、紙一重ではない、運でもない、たしかに小さい差ではあるけれど次に活かせるさであることを告げられて、彼女にとっても救いになったんじゃないかな。

ちょっとギャグよりの演出にはなっているけれど

彼女の演技に足りなかったものを知ることができて、杉本さんのこれからがすごく楽しみになりました

是非さらさにリベンジしてほしい。

 

で最後にさらさの祖父が倒れるという事件が起きるわけですが

熟考の末さらさの代役を引き受ける愛ちゃんの成長ぶりにもグッと来ちゃうんですよね

彼女の代役への挙手は、さらさだけの事を思ってではなく

本科生の、聖先輩の晴れ舞台を台無しにしない

さらさに合わせてチューニングした他の3人の演技を邪魔しない

失敗したときの辛さを他の同期に味あわせたくない

回りの事をすごく良く考えててね。

彼女の人間としての成長もこのまんがの見所ですね

 

 

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