母子手帳にあの子の名前を書いたのが最初で
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大我が死んだっていう、書類にも、書いた
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死亡届だけじゃ、ない
大我はここからいなくなったって書類
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たくさん大我の名前、書いた
だから、わたし
私が大我をころしたんだ
齢30を過ぎて子供まで生まれると、現実から離れ異世界をおう歌する主人公ではなく、取り残された家族はどう過ごしているのか、どうしてもちらついてしまう
そこらへんもあって、転生者もそこそこの年齢で社畜で過労死とか、あるいは天涯孤独の身か、そういった現世にあまり未練のない主人公も多いけれども
本作の作者がこの作品を作ったきっかけも子供が生まれて同じような感情をもったからだそうで
異世界転生物で、たった数行で処理されてしまう主人公の死のその後を、残された側から書いたものになります。
本来交わるはずのなかった2人の大人が、一人の少年の死をきっかけに、大切なことを受け入れる話でもあります
何と言いますか、こうあまり人の死、というものについて、割と敏感にとらえてしまうきらいがありまして
本来ありえたはずの未来・可能性がそこで断絶してしまうことに対して、もし生きていれば・・・と本筋とは関係なく考えてしまうんですよね
思えばAIRもそうだったなぁ
私が怪奇ものが好きというはなしは「地縛少年 花子くん」の紹介の時に話をしましたが
言霊という概念がとても好きで
「本来実在しないものについて、特定の集団の中で共通の概念となった時にまるでそれが存在するかのようなふるまいを取り出す」
ということに面白みを感じるんですね。
去年アニメ化した「虚構推理」なんかもそういった話がありましたね。
本作を読み終わって、ある意味で「異世界転生」は死後の世界に準ずるような、もう少し現世に近いカジュアルなものとして在り様を確立し始めているのかしら
とふと思いました
彼女にとって、実在が確認できないという点では死後の世界と大差なく、異世界は死後の世界よりも救いのある世界。
勿論あまりにも歴史の浅い「異世界」は死後の世界ほど強い存在を確立してはいないですが
宗教上の死後の世界についても、それは生きている人の、あるいは残された人の心の平静のために生まれた概念であることを考えれば、より近代的にアップデートされたものと考えてもいいのかもなぁと思ったり。
何よりも、父として、お子が成人する前に人生を全うしたときに自分は冷静でいられるのか
特に後半の彼女の悲痛な叫びが頭から離れず
しかしそれを彼女から引き出せたのはもう一人の主人公であるさえない彼しかありえず
喪失を受容する物語として、簡潔ですごくまとまった傑作だと思います。
たった99円ですし、手に取ってもらえると
なんかフルプライスで販売しなおしちゃったみたいですね
99円版の表紙のほうが好きだなぁ・・・
ついでに作画を付けて改めて連載するそうで
正直原作のイラストも味があって好きですが
こちらもそれなりに加筆があるようで楽しみです