日本での公開が決定してから
これはマストで見ないといけないと、心に誓っていた映画
オッペンハイマー
公開初日が今年度最終日でしたので、さすがに初日に見に行くことはできませんでしたが
翌日朝の回で、見てきました
ということで #オッペンハイマー
— べる (@bel729) 2024年3月30日
流石に2番目に大きい箱
ノーラン監督常連のキリアン・マーフィーが初めて主演と謂うのも感慨深い pic.twitter.com/KVr6LryuC2
この映画を見た感想はただ一つ
この映画を日本で見れてよかった、劇場で見れてよかった
これに尽きます
オッペンハイマーのパーソナリティについての映画
まずこの映画を語る上で、当然のことながら原爆は切って話すことはできません
出来ませんが
原爆が主題ではなく、それも含めたオッペンハイマーの生涯についての物語です
彼の伝記が原作だから当然ですが、どうしても日本人としてはバイアスがかかってしまうので、そこは念頭に置いたほうがいいと思います
ドイツの狂気から世界を守るため、アメリカの頭脳を集めたマンハッタン計画
その舞台となったロスアラモス研究所で
科学者たちの喧々諤々のぶつかり合いの果てに原爆が完成するまでと
第2次世界大戦後の冷戦という対立構造の核に、核兵器が文字通りなってしまったこと、そして、その対立構造の中でアメリカに吹き荒れた赤狩り「レッドパージ」にあまりにも共産党と縁が深かったオッペンハイマーが巻き込まれていく物語
この2つの物語で構成される本作の主人公
奇想天外で神経質な科学者、オッペンハイマーを
ダークナイト三部作でスケアクロウを
インセプションで、インセプション作戦のターゲットにされてしまう気の弱い2代目社長役を演じ
未視聴ですがダンケルクにも出演
そして本作でとうとう主演をゲットしたキリアン・マーフィーが迫真の演技で好演していました
ぎょろぎょろした目とカサカサした唇が本当に雰囲気があってよかった!
なんかほめていない感じだけど本当に良かった
唇がカサカサしてそうなのは、監督がこだわったフィルム撮影のざらつきかも
でも、本当に彼以外ありえない!ていうくらいの熱演で、アカデミー主演男優賞も納得です
カラーとモノクロ 二つの世界
本作は主に2人の人物を中心とした場面でストーリーテリングがされています
主人公、オッペンハイマーが知りうる世界と
ストローズという政治家を中心とした世界
この二人の視点が切り替わるときに、カラーからモノクロ、モノクロからカラーへと色味が変わります
このことによって、2人が同時に移っているシーンでも、どちらがこの場面の中心人物なのか、また何についての場面なのかも明確にわかるようになっているのが
複雑なようでいて、ノーラン監督にしては親切だなと思ったり
日本への配慮はそこかしこに
私は、本作で原爆が肯定的に描かれることは、それは仕方がないと思っています
だって、肯定的な米国の空気の中で作られたのだから、ノンフィクション物として
そこは本作で一番うそをついてはいけないところです
ヒットラーという狂人に、神が如き力を与えてはいけない
人の手に余る力だから、たとえ相手が作ろうと、我々は作ってはいけない
なんて甘えた考えは、結果として多くの味方を危険にさらす考えで
危険な人物がその力を手にする前に、まともである我々が、その力を安全に管理する
どこかの少佐が悪い顔してにやにや笑ってきそうな話ですが
https://x.com/oginomatomewiki/status/1264883079341998085:embed
ヒトラーに比べれば米政府のほうがましというのはまぁそうなんでしょう
そして、日本で普通に暮らしているとなかなか情報として入ってこない
当時のアメリカの原爆に対する感情も見ることができました
その中で、原爆投下までの間も、多くの科学者が、決して必須ではない、恣意的な行為として、原爆の日本投下反対署名をしていたことを知れたのは、本作の中で救いのようなものを感じることができましたね
私は日本公開前から、「原爆投下のシーンを流さなかった本作は原爆を軽んじている」
という意見に反対でした
そういうことは、そういうことを訴えたい映画でやればいいし、
それがないからといって、重んじることができないなんてことは全くない
そのためだけに、無理に付け加える必要はないと思っていますし、
この映画は、むしろ映さないことで十分に原爆を重く扱ってくれていると感じることができました
ヒロシマ・ナガサキを移すまでもなく、トリニティ実験をじっくりと念入りに描写することで、得も言われぬ恐怖を描くことができていますし
投下前に情報を共有してほしいと念を押したにもかかわらず、事後のラジオで知った
という事実が、政府への不信、自分の行いに対する疑義へとつながっていき
のちの彼の核に対するスタンスにつながっていくので、広島長崎の原爆投下を見ていない、聞いていない、ということはむしろ大事なファクターです
リアル中継もしていない時代に、オッペンハイマーとストローズの2人の視点しかない映画にそんなイデオロギーのために第3視点が生まれる必要はない
日本人として、十分日本への配慮を感じる作りだったと思います
もちろん、核実験が成功して拍手喝采になっているさまや
ヒロシマナガサキへの原爆投下が成功して有頂天になる軍人たちにはもやもやしましたが
でも、繰り返しになるけど、ここでうそをつくべきではないし、
喜びたいけど素直に喜べない科学者たちの動揺もリアルだなと思いましたね
何より、これが成功してしまうと日本に原爆が投下されてしまうのに
あまりの画面の緊迫感に、原爆実験の成功を、科学者たちと一緒に手に汗握って息をのむ自分がいたのも事実でした
豪華な俳優陣
前回見たDUNEもものすごい豪華な俳優陣でしたが
本作はそれ以上に主役級が勢ぞろいで、名優たちの力演にも圧倒されました
まずは、アイアンマンでおなじみ、本作でアカデミー助演男優賞も受賞した
ロバート・ダウニー・Jr
所作がいつも通りチャーミングで、あぁ、やっぱりロバート好きだなって思いましたが、表情豊かに、振れ幅の大きいキャラクターを熱演していて、確かに彼なしに本作は傑作足りえなかったなと思わされます
そのほか、マッド・デイモン
気性は荒いけど、オッペンハイマーとの奇妙な友情関係がだんだんと築かれていくのも見どころの一つでした
エミリー・ブラント
妻というよりは、世の理不尽に対する共闘者といった感じ
強い眼力が説得力がありました
フローレンス・ピュー
は、DUNEにも重要なポジションで出演していましたね
唯一濡れ場のある女優でしたが、扇情的な表情、はかなげな雰囲気が非常にマッチしていました
メインどころ以外でも、
トルーマン大統領はゲイリー・オルドマン
科学者として、ケネス・ブラナーやラミ・マレック
マッドデイモン演じる少佐の部下に、私としてはアメスパ2以来のディーン・デハーン
米軍諜報部部長にベン・アフレックの弟、ケイシー・アフレック
作中ヘイトを一身に集めたオッペンハイマーを尋問する弁護士に、ターミネーター・ジェニシスでジョン・コナーを演じたジェイソン・クラーク
個人的には、ダークナイト以来のノーラン作品参加で、DUNEPart1にも出ていた、デヴィッド・ダストマルチャンがまぁまぁ重要な立ち位置で出演していたのもうれしかったですねー
最後に
いやー、凄いものを見た
物理学者の半生でどこまで面白い映画になるんだろうと半信半疑でしたが
全然杞憂でしたね
アカデミー賞7部門受賞は伊達じゃない
日本で見れたことに感謝しかないです
今年の暫定1位ですねー
とはいえ今年の上半期は見たい映画が多い
3月公開ですらまだ
デッドデッドデーモンズデデデデストラクションとゴーストバスターズが残っている
し
4月はゴジラ
5月はウマ娘とデデデ後編、あと諸事情により危ない刑事を見なばならぬ
まぁ楽しみな映画がたくさんあることは幸せなことですね
全然話それるけど、さんざんオッペンハイマー疑われてソ連のスパイは全然関係ないやつでしたって落ちも酷いんだけど
こいつ、ソ連に情報渡して、捕まって釈放されて東ドイツ行って中国にも核技術渡してるって
今の米中対立の根本原因の最大戦犯こいつじゃねーか
クラウス・フックス
なんでこんなんが天寿まっとうしちゃいますかね・・・