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新海誠的ディザスタームービーの到達点【すずめの戸締り】

 

前作「天気の子」が自分でも引くくらい刺さってしまったので

 

belphegor729.hatenablog.com

楽しみにもしていたものの、天気の子で上がりまくったハードルが邪魔をして

公開日が近づくにつれ期待よりも不安が募っていたのですが

 

とうとうその日を迎えたので、見に行ってきました

すずめの戸締り

 

 

 

 

結論から言うと、良かったです。凄く

なんだろう。

凄くちゃんとしていた。

理屈が通っていないとわかって押し切っていると思われる個所もなくはないんだけど

まぁ、いいか

と思わせるくらい本筋で魅せてくれているのは天気の子と同じ

振り返ってみると案外奇をてらったことはしていないなと思うものの

そもそも王道を手を抜かずちゃんとしてくれる映画に最近全然出会えていないので

真っ当であることの素晴らしさも感じてしまいました。

以下感想

 

 

 

 

 

ざっくりストーリー

言ってしまえば軽い気持ちで引き起こしてしまった事件の後始末を行うジュブナイル物の定番で

最近の名作だとスパイダーマン/ノーウェイホームもそう

belphegor729.hatenablog.com

 

震災で家族を失い、叔母のもとで暮らしていた女子高生 すずめ は通学の途中、見覚えのあるイケメンに「廃墟はないか」と声をかけられたことが気になってしまい

教えてあげた廃墟に自分も行ってみたところ

水たまりの真ん中にポツンとたたずむ扉が一枚

扉に近づくと大きな石に躓き

それを持ち上げたところ石は猫に変化し、逃げ去ってしまった。

その直後に発生する大地震

すずめが抜いてしまった石は、地震の原因だった神様を封じる「要石」で

すずめがであったイケメン 草太 は神様を扉に封じる「閉じ師」だった

しかし草太は要石が変化した猫に、椅子に変えられてしまう

すずめは、草太を元に戻すため、猫を追いかけて日本を横断する

 

ざっくりのはずなのに長くなってしまった・・・

 

 

 

 

君の名は、天気の子の2点で引かれた線上にしっかりと立っている作品

今回本作を見て一番感じたのがこれ

こっからネタバレ込みで語っていきますが

君の名は、と天気の子

の両方で扱われているのが

伝統、伝説

災害

君の名は、は口噛み酒とその巫女、そして隕石

天気の子は、そのまま天気の巫女と、大水害

災害が、あるいは災害を防ぐキーとして超自然的な現象をつかさどる文化がある

そして本作は、地震を引き起こす神を封じ込める「閉じ師」の青年とその地震の中で今もなお私たちの心の中に残り続けている3.11

同じテーマで、着実に前に進んでいる感じ。

新海誠監督の作品で次を作るならこうだろうな

という、いい意味で予想を裏切らなかった。

しいて言うならば、個人的には君の名は、も天気の子も3.11の体験があったから生まれた作品だろうと思っていたので

3作目でもう今まで影にちらついていたあの大震災を主軸にもっていくのか

とそういう驚きもありました。

 

ただ、3.11を体験した高校生を、リアルのタイムラインに乗せて登場させるために

12年後の今取り扱う必要があったのだと

作中もリアルと同じ2022年にすることで

映画を見ながら視聴者の我々もシンクロナイズしながら過去に思いをはせていく

あんなことがあった、こんなことがあった、あれがつらかった、あれがうれしかった

正直、あのときたくさんのいってきますがあった

というメッセージはかなりしんどい

きつい

監督も、このテーマを扱うことに葛藤があったように、来場者プレゼントの新海誠本から感じる

すずめも、彼女を引き取った叔母の環も

3.11がなければもっと幸せな人生があった

私だってそう、日本そのものがそう

終盤若干唐突めに盛り込まれるすずめと環の不和も

とはいえ二人が12年の中で歩み寄り切れておらず、すり減らしながら暮らし続けたことを暗に示唆し続けており

そしてまた、あれがなければ、という視聴者のフラストレーションを代弁しうるシーンでもあったのかなと

あのシーンを見ながら私はこの漫画を思い出していましたねー

こちらはもっと家族関係は良くて、良すぎるがゆえにすれ違っているのがストーリーを転がす起爆剤になっているのですが

話を戻し、3.11というテーマは新海誠監督が映画を撮り続けるうえで避けて通れない題材だろうなと思っていたので、取り上げたこと自体は納得ではあるのですが

ここで使ってしまった結果、次はどういった作品を取るのか、全然読めなくなったなぁと

もしかしたら全然違うテーマで作るのかもですね。

 

奇をてらわないことの気持ちよさ

最近、特にMCUで感じることが多いのが、

「すごい壮大なストーリーにしようとして、何が何だかよくわからない」

と、思考の迷路に陥ることが多くて

そもそも脚本が凝りすぎて破綻しているパターンもあれば(LOKIとか)

私自身に問題があって、もう脳の老化が始まっていてむつかしいこと理解できなくなっている可能性もあるんですが

そういった点で見ても今作は、王道を丁寧に積み立てていったなぁという印象

序盤ちょっと冗長かなぁと思うくらいですね

でも、日本を横断するロードムービーとするにあたって、1か所1か所で出会うキャラクター達を丁寧に描いていくことで、その中にカギとなる情報をこっそり忍ばせられていて

だから、最後に幼少期常世で出会った女性がだれなのか、イケメンに見覚えがあったのがなぜなのかが、頭の中で

バチっ、とはまった時の爽快感!

ド直球にドオーソドックスなタイムパラドックスものだけど

でも「俺が求めていた展開はこれだ!」

と歓喜にわきましたよ

王道は使い古されて陳腐になっていくわけではなく

ちゃんと作れば見る者の気持ちを沸かせられるから王道なんだと

 

最近変に政治批判とか、変化球とか投げられて本筋に集中できないことが多かったので

天気の子ほど刺さったわけではないですが

でもすごく良かったですね。

大きな悲劇を、政治的な思想を入れず、フラットに、敬意を示しながら扱った点で

この世界の片隅ににも似た雰囲気も感じることができました

 

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エンディングで淡い色の優しいタッチでお世話になった人たちに環さんと一緒に巡っていくのすごく良かったですね

 

気になったところ

いち観客としては良いところだと思いつつ、感想書きとしては悪いところだなぁと思う

好感を持ってしまったら細かいあらは気にならなくなる現象は本作でも発動していますw

環さん町役場職員ですかね?40で部長はちょっとリアリティないかなとか(民間だったらありうると思うけど、職場の役所感が強いのでそうかなと)

 

椅子永遠にループしとるやん1週目のループではどこから持ってきたん?とか

どんどん汚くなっていきませんかねとか

まぁ思うけど無視していいな、とマイナス評価には入れていないです

あのすずめはまだループ数が少ないのかもしれない

 

要石について、というかダイジンについて

草太が次の要石になってしまったこと、そのことに彼自身以外性を感じていなかったことから

要石を構成する神は草太と同じくもともと人間で

羊郎のいうとおり、徐々に神になっていくのだとしたら

ダイジンもサダイジンももともと人だったってことだよね。

サダイジンは抜けてしまった後の振る舞いや、ダイジンの構い方を見るに

声色から推測されるような高齢の人間が要石になったんだろう

要石になる意味を理解したうえで身をささげたんだろうと思うんだけど

あれ?ダイジンはガチの子供が訳も分からず人身御供にされたんじゃね?

と思うと、まぁえぐいですね。

えぐいですし

あの無邪気さもわかるし、役目から解放してくれたすずめに異様になつくのも理解するし、無責任に草太に役目を押し付けた行動原理もなるほどなぁと思ったり。

 

まとめ

ということで、すずめの戸締りの感想でした

いいもん見せてもらった。

そして、この日もう一本映画見たんだけど

そちらも本作と同じく

最愛の家族を失った主人公が、物語の末にその別離を受け止める話だったもんで

うーん。

順番逆のほうがよかったなというお気持ち