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映画、漫画、革のブログです

#違国日記 の千世の改変について思うこと

だいぶネタバレです

見ていない人、読んでいない人注意

 

ですが

違国日記 

belphegor729.hatenablog.com

感想、というか失望をぶちまけた記事でこういうコメントもらったんですけど


最初に、感想記事で強い言葉を使ってしまったことは良くなかったなと少し反省してます

お前こそポリコレ言いたかっただけやろってのはあったかもしれない

他に入れるべきエピソードあったやろってまぁあったと個人的には思うんだけど、別に千世のエピソードも重要なエピソードで、ただこんな雑に突っ込まれるならもっと他にと思ったんだけど、多分この監督だと突っ込んだほかのエピソードも尻切れトンボになって「ん?」ってなってた気がする

 

ただ、このコメントは私の悲観ポイントと少しずれてて

映画では男尊女卑の話でしたが

原作では試験の不正の話なんです

もちろん、その根本に流れる問題は男尊女卑ですが

 

交換留学生のくだりは、別に不正でも何でもない

体力のある男のほうがいい、相手方が男を望んでいる、バランスを取るため

取ってつけたものですが、理屈はついているし、何よりもあの世界線では女だから落とされた、と言うことが開示されている(信じられないけど)

 

原作で取り扱った医大の不正は、理屈が付かない

理屈がつかないし、開示されていない、秘匿されていたことが明るみに出た、という話だ

その点でも全然深刻度が違う

 

また、交換留学ができてもできなくても、極論千世ちゃんの進路に大きな影響はない。もちろん全くないとは言わない、千世ちゃんにとって不利にはなろうけど

でも試験の不正は進路に大きな影響が出るわけですよ

大学合格と交換留学を同列と考えてトレードしたのは千世ちゃんの憤りの本質がずれてしまわないかと

 

そして、原作は、女子が医学部入試という、ほとんどの学生には遠い話だからこそ

ほかの生徒たちのしらーっとした空気感が生きるわけです

「自分が被害を受けたわけでもないのに」

って

でも、千世ちゃんにとっては「発覚しなければ自分も被害にあったかもしれないし、これまでの被害者は弁済されない」

ということに憤り、激怒したんだと思うんだけどね

クラスメイト達にとってはあまりにも遠い、でも千世ちゃんにとっては自分ごと

 

では映画の脚本はどうか

自分の学校の交換留学の話は、彼らにとっても、他人事ではないんですよ

今回の件について千世ちゃんは直接的な被害者だ

学校がそういう態度で生徒に接するのであれば、別件で自分たちも被害を被るかもしれない

と、クラスメイトはもっと自分事として考えるはず

それを、そんなかっかしないで、みたいな空気をクラスメイトが出すのは

「え?なに?千世ちゃん嫌われてんの?」みたいな不穏さを感じるし

最後の彼のなんだ、茶化す話じゃないだろ

あれ差し込む必要あったか????????

 

そして、そのエピソードに対するエクスキューズまでカットしてしまうから

そんな理不尽があっても、絶望しない、という朝のアンサー

成長が無くなってしまっていることも

正直なんでほんなことするの?って感じです

私が否定したいのは、このエピソードを入れてくれと希望した原作者ではなく

このエピソードを、

医学部入試という普遍的な話から、学校単位の局所的な話に矮小化し、なのにクラスメイトのリアクションは変えないことによってぞっとするほど冷たいクラスに仕立て上げてしまうような改変をした監督=脚本

に対してです

 

映画の舞台を2023年にしたので改変しましたってパンフには書いてあるみたいだけど、変える必要ある?

ちょっと風化し始めている今だからこそ改めて同じ話をする意味があるんじゃないの?

 

私は、

私は映画の中に随所に差し込まれる

無神経さ

槙生の母が朝に死体を確認しろっていうシーンだけ差し込んで、それに対する槙生の憤りをカットしたり

塔野が、ワンシーンだけ無神経な弁護士としてしか登場せず、人の心がわからないことに苦しんでいることをオミットしたりとか

ライブのボーカル選びで、誰も手を上げずに凍り付くような居心地の悪さとか

(なのに朝がボーカルに選ばれてるのも、あまりにも空気が悪すぎたのでしっくりしない)

そういうのを凄く感じる

 

卒業式で両親が死んだことをえみりの母が先生に伝えクラスメイトに広がってしまって、朝が激高する話も、

「でもよくよく考えたら学校に知らせないままでいけたか?」

ってフォローを原作ではしているんですよ

 

学校の先生間違って無くない?ってXで疑問を呈する投稿もあったけど

間違ってなかったかもね、っていう言及は原作にはあったの

でも、

「親が死んじゃった人になりたくない」

っていうフレーズを捨ててしまったから

ここで拾うことができなくなってしまった

たった1つのワードを捨てるだけで、いろんなところで無理が起きてる

 

無理をそのまま放置していると思ってしまったので

優しさも、柔らかさも

私はこの映画からは到底感じられなかったし

こんな素晴らしい原作の実写映画化というカードが

こんな形で消費されたことも

とても悲しい

 

新垣結衣さん凄く良い演技だったと思うけど

映画の槙生は原作の槙生と私は別人だと思っている

だから、新垣結衣さんが私のイメージする”槙生だったか?

と聞かれると否

 

でも、ぜひ新垣さんの”原作の”槙生さんを見てみたいとは思った