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映画、漫画、革のブログです

多分絵に意味を求めてはいけない作品なんだろうなぁ・・・【#アステロイド・シティ】

まず最初に、なんとなく見に行った監督の過去作

グランド・ブダペスト・ホテルがすごい刺さったんですよ、私

 

どぎついくらいのピンクをベースにした、独創的な色彩の世界で

なんとなく胡散臭い紳士「グスタヴ」をレイフ・ファインズが好演し

のちにDrストレンジで神秘的な導師、エンシェント・ワンを演じるティルダ・スウィントンが原型が無くなるほどのメイクで老婆「マダム・D」に扮し

トムホスパイディでフラッシュを演じたトニー・レヴォロリがグスダヴのバディを汲んでいて、不思議な世界観の中で

マダムDの遺産をめぐる争いを、ポップに、スプラッタに描いた奇作で、まぁ面白かった。

 

んで、自作の「犬ヶ島」を見逃し、ちょっと頭の中から薄れていたところで

SNSの広告で新作が公開されることを知り

MCUを卒業したスカーレットヨハンソンが出るんかとちょっと興味をもって見に行ってきたのが今作

「アステロイド・シティ」

スカーレット以外も、

グランド・ブダペスト・ホテルに出演した、ティルダ・スウィントン、トニー・レヴォロリ、ウィレム・デフォー、エイドリアン・ブロディや

MCUなどアメコミ映画つながりでハルクを一度演じたエドワード・ノートン

ハーレイクインを演じたマーゴット・ロビー

マイティソーでグランドマスターを演じたジェフゴールドブラム(この人もGBHに出てたのか)

個人的に大好きな映画、ゲットスマートで主演したスティーヴ・カレル

などそうそうたる俳優が出演していた本作

 

ただまぁ結論から言うと大外れで、ちゃんと前情報誌入れてから見るか判断すべきだったなと後悔しています。

これ見るんだったらバービーかMEG2だったなぁ・・・

 

ということで、がっつりネタバレしつつ批判していくのでまだの方で見る予定のある方、面白かったと思った人は回れ右をお願いします。

 

正直ね、予告は面白そうだったんですよ

 

予告から得られたストーリーは

米国のとある町に集まった人たちが、宇宙人と遭遇したことから米国政府の隠ぺい工作に巻き込まれる

という感じなんだけど

 

予告では大事なことを隠しているんですよ。

実際は、

”という劇を作っている”人たちの話が間に挟まってくる。

いきなり最初にスクエアでモノクロの画角で、架空のライターが苦悩して書き上げました、みたいなナレーションが耳障りの良い司会によって語られ、

これは劇(しかも舞台劇)なんですよーというていで始まるんだけど

そこから始まるストーリーは予告で見れるようにちゃんと映画としているので

正直舞台劇であるという種明かしがノイズになって刺さらない

というか、これが舞台劇である理由というか、意義が私には全く分からなかった

 

最大限好意的に解釈をすると、最後の謎の集団催眠のシーンで

「この劇は宇宙人自身がその存在を隠ぺいするために劇作家と出演者をマインドコントロールして作らせたもの」で、”宇宙人は空想の生き物なのですよ”と、だから本気にしないでねといった形で真実は隠ぺいされてきたのだ

的なブラックジョークなのかなぁ。。。そして劇作家は証拠隠滅のために事故に見せかけて殺されたんかなと

まぁ多分そういうことなのかなと思うんだけど。

そのくだりがまぁチープで唐突で「うわぁ・・・」と変な声が漏れてしまったわけですよ。

まずネタとして使い古されてるよねっていう。

宇宙人によって事実が隠蔽されている、こすられまくってきた話よねぇ。

ある意味本作というかウェス・アンダーソン監督作品がまとっている古き良き映画の空気を体現するネタかもしれないけど

 

そう考えると、主人公の死別した妻役のシーンが全カットされたのも、劇作家の最後の抵抗が残っていて「宇宙人についてあまりにも言及しすぎている」のであとからカットされたのでは、という推測もできるんだけど

あとから一生懸命考えてひねり出した予想なので、もしあっていたとしてもあまり質の良いオチではないのかなと・・・

 

で、舞台と舞台裏と2つの場面で構成されているのはグランド・ブダペスト・ホテルと同じなんだけど、この2つのシーンが全然親和性がなくて

いつか2つの物語が交差するのかと思うと全然交わらず、

じゃぁ部隊に集中しようと思ってもちょいちょい挟まれる意味があるのかどうかわからない舞台裏の寸劇がノイズとなって邪魔してくる

おっさん同士のラブシーンになんて興味がないし、全然本編に絡まないスタッフの離婚話なんかもなんで差し込んだのかがわからない。

1作しか見ていないからこそ「ウェス・アンダーソン監督なら意味があるのかもしれない」と頑張って好意的に見ようと思ったけど

あのシーンたちがどうほかのシーンに影響したのかが全く伝わらない

 

当たり前なんだけど舞台裏のシーンが全くなくても全然成立するんだよね。

それくらい2つのシーンに親和性がない。

あそこであの舞台裏が挟まったからここはこうなるのか、とかがないし

舞台のシーンは演じてる感を完全に排除しているので、演者としてのペルソナが全然ない、活きていない

大体舞台であんなたくさん子役出して成立するかよ!という些末なところも気になり始めてしまったり。

そもそも舞台自体も意味不明なんだよね。

俺はアメリカ政府の隠ぺいにどう住民たちが対処するのかというサスペンスコメディが見たかったのに

宇宙人もぬるっと出てきて驚きがないし

(そもそもこの宇宙人のCGが酷いんだ)

隠ぺいって言っても封鎖するだけだし、外部との連絡もあっさりとできてしまう。

あと何よりも全体的にあっさりしすぎてアメリカ政府が悪だくみしている感が皆無

なんかぬるっと封鎖解除されるし

 

もちろん、パステルカラーの世界観と、一つ一つの絵は素晴らしい

子役たちもかわいらしく、キャラクターたちはそれぞれ立っているけれども過剰に戯画的で特によくわかんない先生と生徒たちは実在感が希薄

そこまで含めてアンダーソン節だといわれたらそれまでだけど

 

全体的に美しくも意味のないシーンで積みあがった、中身があるようであんまりない

そんな感じの作品に感じたよ・・・

最初と最後に出てきた珍走団とそれを追う警官は何だったんだ・・・

 

全体的に考えたら負けだけど考えずに見て楽しめる作品ではなかったって感じですかね・・・

 

本作を絶賛している人って、まずウエス・アンダーソン監督の画作りが好き!というところから入っているのに対して、

私はどうしてもストーリーに意味を求めてしまう。

そこが良かったうえで、初めて画作りの良さに価値が生まれてくる、という見方しかできないんだなと、グランド・ブダペスト・ホテルはたまたまハマっただけなんだねぇ…

 

ただウェブサイトに載ってるこの絶賛コメント

フィクション見てこれが真実とかリアルとか言っちゃうの本当に知能指数低く見えるからやめた方がいいともう。トゥルー・ストーリーって、自分に酔いすぎ。別に抱腹絶倒に語ってもないし

純粋にダサい…

 

これが本当のアメリカ?会ったことのない原色のヤバい50年代。それはデヴィッド・バーンも描けなかったオカしな真実の物語トゥルー・ストーリーズだ。超一流俳優達が、がんクビを揃えて抱腹絶倒に語るのは、危ない危ない米国のリアル、深層、御開帳なのだ!

サエキけんぞう

作詞家・アーティスト