特に秀逸な一品!
とかタイトルで言っておきながら、同時期に公開された「スパイダーバース」も、ヒーローのオリジンとしてめちゃくちゃエモい名作なのですが、
この2作、前の記事でも言いましたが時期が悪くて私の周りで見ている人皆無に等しかったんですよね。
個人的には大ヒットした「アクアマン」よりもシャザムのほうが、シナリオのクオリティは高いと思うのですが(その代わりヒーローのキャラクタとしての秀逸さは甲乙つけがたいものがありますよね。あとは好みの問題だと思。)
シャザムとの出会いは、実は結構前で、私をアメコミの沼に叩き込んだ傑作
「KINGDOM COME」という作品です。
- 作者: マーク・ウェイド,アレックス・ロス,秋友克也,依田光江
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2010/10/30
- メディア: 単行本
- 購入: 10人 クリック: 97回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
キングダムカムはDCのコミックの中でも特に有名な名著で
ヒーローとは何か、という命題をスーパーマンとバットマンの対立を添えながら描いていく大作で、絵一枚一枚が
ポスターか!
っていうくらい綺麗なのですが、SHAZAMは本作の中で重要なポジションで描かれています。
ただ、扱い自体は決して良いものではなく、ちょっと可哀想な役回りだったので、
そのシャザムが主人公の本作は、とても楽しみにしてたんです実は
実際に見に行って、期待を上回る傑作だったのでべるさん大歓喜
しかし誰も見ていないので感想を語り合えない( ;∀;)
という感じだったんですよね。
DVDも出ましたし、興味があったけどエンドゲームあるし・・・でみなかった人も、きっと見てるでしょう。
見てない?
じゃぁ私の前記事見て、ツタヤ行こう
ということでバレあり感想です。ついでにガーディアンズオブザギャラクシーリミックスの内容についても少し触れますので、そちら未見のかたもご留意ください。
・同じ境遇だった二人のパワーバランスが崩れることによって生まれる人間関係の変化
個人的に本作の見どころは、主人公 ビリーパットソンと、その義理の兄弟となるフレディ・フリーマンの関係性だと思うんですよね。
ビリーは両親の不在について周りが思っている以上にメンタルが消耗していて、
フレディは足の障害でたくさんつらい思いをしており、それでやはり心身を消耗している。
似たような境遇の二人がそれでもメンタルの消耗の末に作り上げた心の壁でうまく仲良くできない序盤。
フレディは素直に友好の意思を伝えられないし、ビリーは本当の母を見つけるまでの仮住まいとしか思っておらず、なれ合う気がない。
そんなぎくしゃくした人間関係が、ビリーがスーパーパワーを手に入れることで、ぎくしゃくした原因を棚上げしたうえで急接近するわけですが、
見かけ上仲良くなっているんですけど、根本的なところでお互いを理解し、信頼していないから親友ではないんですよね。
その凄い危ない線の上で綱渡りの友好関係を構築していることをとても丁寧に描いていると思うんです。
かりそめの友好関係で、いうなれば戦略的互恵関係というか、お互いがお互いを利用している状態。
しかもそれもいびつ
フレディはビリーに自身の願望を投影していて
ビリーはフレディを秘密の共有者として必要としている。
しかし、ビリーが一人でシャザムとして活動する自信が出ていくにつれ、フレディを必要としなくなっていく。
フレディは子供ゆえの未熟さで暴走していき、そんな自身の危うい立ち位置に気付かぬままシャザム=ビリーへの要求を強めてしまう。
その歪みが頂点に達した決裂のシーンのフレディの演技はとても素晴らしかった
物語としてもあそこが一つのターニングポイントでしたね。
唯一の秘密の共有者を自ら切り捨てた後で、敵対者に捕捉され一人で対処することを強いられる。
それまでは、子供がスーパーパワーを手に入れた大人になるメリットしか描いていなかったところで、同じくスーパーパワーを手に入れた大人が対峙することで、子供である未熟さが強調される。
そこで、フレディとの決裂とDrシヴァナとの対峙で、自身の未熟さと、フレディがビリーに投影していた思いを知ったことによる動揺で物語の前半が終わり、明確に作品のカラーが変化していきます。
・悲しすぎる母との対峙
本作のもう一個のハイライトはここですよね。
長い苦労の末にやっと出会えた母との対峙。そこで、孤児となった理由が、積極的に捨てたわけではないけれど、はぐれた後に積極的に会いに行かなかった。まぁ結果として見捨てたわけですよね。未必の故意っていうんでしょうか。
探し求めていた母親が、自分に対して愛がないことが判明してしまう。
つらい
だめ押しのように、離れ離れになったことを気にかけているふりしかしていないことが、ビリーが大事にしていたコンパスのことを覚えていないことからわかります。
さらにつらい
GotGのスターロードは、まだ見かけ上とはいえ感動の再開があり、今の家族と本当の家族どちらを選ぶかという葛藤がありました。父親にも必要とされていましたしね。
しかし、ビリーの母親は徹底してビリーのことを気にかけていない。
母親の現在の生活環境を見るに、見る目がなさそうではあります。だめんずウォーカーというか。
探していたが自身の存在を疎ましく思っている本当の母と、みなしごたちに分け隔てなく愛情を注ぐホームファミリーの新しい両親と、どちらのもとに戻るべきか
ビリーが決断し、選んだ家族のもとに変身して駆けつけるシーンは、悲しくも美しい、グッとくるヒーローの誕生シーンでした。
そこからさらに話が加速していき、「心を開いたものに力を与える」という序盤の賢者の言葉から兄弟すべてに力を与える展開は燃えました。
月並みですけどいいですよね。ただ、事前にシャザムについて調べてから映画を見たので、驚きが半減してしまったのが残念。
事前勉強してから見に行くのも善し悪しですなぁ。
・そのほか雑感
賢者、最初のうちは丁寧に試験を課していくのにどんどん雑になっていくのが苦笑いでしたね。
しかも試験に封印していた魔物を使うのも、結果として魔物の力に魅入られてしまった子供が封印の破壊者として舞い戻ってきてしまったので、自業自得というか
ちょっとここら辺「ドクターストレンジ」のカエシリウスと似ていますね。
古代の魔術がパワーソースという点でもドクターストレンジとの類似点があり、ただ、パワーソースだったり、力のありようについては大きく違うので
この2作を見比べてみるのも面白いです。
Kingdom Come (Dc Black Label Edition)
- 作者: Mark Waid,Alex Ross
- 出版社/メーカー: DC Comics
- 発売日: 2019/05/07
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る