悲劇を回避するというフォーマットはカタルシスを得やすく
なるほどなろう系でモチーフとしてよく扱われるのもわかる気がします
私が悪役令嬢もので生まれ変わりよりも時間戻り系のほうが好きなのも
生まれ変わりだと過去彼女が死んだ悲劇は回避できないものとして固定されるのに対し
まず回避すべき悲劇を提示したうえで、それをモチベーションに物語が進んでいくからなんですよね
異世界転生系も同じですね
悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。: 1【電子限定描き下ろしカラーイラスト付き】 (ZERO-SUMコミックス)
王太子様、私今度こそあなたに殺されたくないんです! ~聖女に嵌められた貧乏令嬢、二度目は串刺し回避します!~ (Kラノベブックスf)
ここら辺が結構おすすめ
2個目は全然進んでいないけど
で、今回紹介する漫画もやり直し系
正直名前だけは聞いていたんだけど、竜帝ってなんやねん、と思ってずっとスルーしていたんですよね
思っていたんですが、何がきっかけだったか漫画を読んでみたらかなり面白い
ざっくりとしたあらすじは
クレイトス王国王太子 ジェラルド の婚約者である辺境伯令嬢 ジル
人一倍魔力が高かったジルは、愛するジェラルドのため、彼に求められるがまま、関係が悪化し、戦闘状態となっている隣国ラーヴェ帝国との争いに従事し続け、気づけば軍神令嬢とあだ名されていた
しかし、ジェラルドの妹 フェイリス王女 の誕生日に、偶然ジェラルドとフェイリスの不義を見てしまったジルはそのまま婚約破棄、拘束、投獄からの死刑宣告をうけた
愛した王太子との婚約はこの不義をカモフラージュするためのものだったのかとショックを受けるも
このままでは終われないと脱獄するジルは
追い詰められ、このまま捕まれば死は免れず、それでも一縷の望みをかけ、城壁から飛び降りる
勘違いしないでください、殿下。あなたがわたしを捨てたんじゃない
わたしがお前を捨てるんだ
しかしジルは王子の持つ女神の聖槍に貫かれ・・・
目覚めた先は、6年前、ジル10歳、王太子からの婚約を受けた彼の15歳の誕生パーティー真っ最中だった
死の直前に願った人生のやり直しがかなったと気づいたジルは
破滅の未来を防ぐため、もっと平和で女の子らしい人生を歩むため
ジェラルドからの求婚から逃れることを決意し、会場から逃げ出す
ジェラルドは一目ぼれだと言っていた
会わなければ求婚されることもないと思っていたのに、逃げた先にもジェラルドが追ってきたことから、この婚約がすでに内定していたことを確信する
逃れる手段はそう多くはない、他人を巻き込むのは忍びないが
彼に求婚される前に、逆に自分がほかの人を求婚すればいい
巻き込むからには幸せにしたい
と言い訳をしながら捕まえた男性は
一週目の人生で王国を蹂躙した隣国の冷酷な帝王、竜帝ハディス だった
現在20歳前後と、10も年が違うのにノータイムで求婚を受け入れるハディス
このハディス・テオス・ラーヴェ、貴女の求婚をお受けしよう。――綺麗な紫水晶の目をした姫君、どうか僕をしあわせにしてくれ
未来の因縁を思い出し、人選を見誤ったと後悔するジル
しかし、6年前のハディスは、未来の彼とは似ても似つかない好青年
彼もまた、思惑がありパーティーに赴いていた
魔力の強い、14歳未満の少女を自分の妃、竜妃として向かえるため
彼にとってもジルからの求婚は自身の目的に合致するものだった
それこそこの上なく
ジルは、王太子からの求婚から逃れるという当初目標はかなったものの
神話の時代から続く、クレイトス王国とラーヴェ帝国の因縁に深く巻き込まれていくのだった
といった感じ
逃亡するジルのカラーページから始まるんですが
最初に感じたのがシンプルに絵が上手い
デッサン力を感じる
画風については割と少年漫画風というか、正直もっと美麗な絵が描ける人はたくさんいるんですよ
これスゲーな、めっちゃイケメン、美人に描くなっての
ただ、顔は良くても、体のバランスが今一つだったり
動き、特に戦闘シーンの動きのデッサンが来るっていたり、固かったり止まっていたり
でも、この方の絵は動きが見えるんですよね
流れが見える
そうすると、戦闘のバリエーションも増えていって、かなり見ごたえが出てくる
またストーリーも非常に堅牢で、私の推しは悪役令嬢と同じように
世界の神話が現在に影響を及ぼしており
そこが物語の根幹になっているために世界観設定がかなりしっかりしている
二柱の女神があり、それぞれを主神として戴く国が二つあり
それぞれの王は、二柱の神の恩寵を今現在受けている
受けているがゆえに、二柱の神の思惑によって国政が動かされていく
ジルがジェラルドの婚約者に選ばれたことも
ハディスが14歳未満の少女を伴侶として探していることも
2柱の神の諍いに起因しており
ジルの目的は
ジェラルドに処断される運命の回避ではなく(それは初手で回避されたと言っていい)
1週目、女神の介入により孤立を深め、絶望し、冷酷な皇帝に堕する竜帝ハディスを救うことへと変わっていく
ハディスは好々とした性格とは裏腹に女神に呪われた自身の運命に絶望しており
妃を求めるのも女神の呪いを回避する盾とするためであり、愛することも、愛されることも求めてはいない。むしろ愛してはいけない
また、女神の呪いによって周囲の好感度にデバフがかかってしまうような状態のため
人を信じることに疲れ切っており、民を救えるなら民に嫌われてもいいと露悪的な行動をとりがちで、それが極まってしまった結果すべてに絶望したのが1週目
自ら不幸になりに行くハディスを、時には叱咤し、時には慈しみ救い上げていくジル
1週目の当時、帝国内で悲劇が起きたことしか伝え聞いてはいないが
その時の伝聞と今ある状況から何が起こるのかを推測し
皇帝を、伴侶を孤独にさせないため
悲劇回避に奮戦するジルが本当に格好いい
もともとは自身の益のために利用しあう形だけの関係だったのが
お互いの利他的な精神に絆され
しかし、ハディスは前述の理由で
ジルは、1週目恋心を利用され使い捨てられた経験から素直にそれを認められず
両片思いだけの素直になれないなのがニヤニヤするし
悲劇回避イベントを経て己の恋心を受け入れるジルと
孤独の未来しかないとあきらめていた自分の心を救い、癒してくれたジルに
利用する相手以上の感情を持つことを、利用することをやめ愛することを決めたハディス
この二人の関係性の変化にぐっとくるわけですよ
漫画はとりあえずなろう第1章までが完了し、第2部に向けて充電中の模様
コミカライズ3巻は3月発売予定みたいですね!
とりあえず、なろう版を読み進めていますが
やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中(小説家になろう)
これもまた面白くて寝不足気味
3章まで読了しましたが章が進むにつれ、女神クレイトスの暗躍と、1週目の人生の真実の一端が垣間見えてきて
第1章ではほぼ出番のなかったジェラルドの妹 フェイリス が強い存在感を表してきたり
ただ一方的に断罪するだけだったジェラルド王子に裏の意図がありそうだったりで
早く続きが読みたい
何よりも、ハディスがジルを妃に選んだ理由
彼がジルを愛さない、愛してはいけない理由
竜妃が14歳未満でないといけない神話的理由の全容が判明したのがいいですね
そのうえで、二人で生きていくと決めたハディスとジルを素直に応援したくなる
以心伝心っぷり、というほど以心も伝心もしていないんだけど
していないと分かったうえでお互い信頼している感じが
むしろ以心伝心しているよりも信頼度が増している感じがして
バディ物としても秀逸
ジルが可愛いのはもちろんなんだけど、ハディスも可愛いんだよね
それでいて二人とも決めるところはびしっと決めるから安心して先が読める
小説版は、コミカライズでは作中で断片的に、ジルの視点でのみ語られる1週目で起きた、2週目で防いだ悲劇を
防げなかった正史という形で公開しており
悲劇であるので非常に悲惨で、結構読むのしんどいんだけど
相対的に、ジルが2週目で守ってきたものの尊さを感じることができ
また、3章正史ではクレイトス王太子ジェラルドがジルに向ける感情についても語られていて
なかなか読みごたえがある
コミックでも、あんまり本編の進みが遅くなるのは嫌だけど、外伝みたいな感じでほかの方にコミカライズやってもらったりできないかな
コミックのおまけマンガでもいいけど
ついでに、原作、コミカライズ担当が同じ前作についても手を出そうと画策中
こっちもタイトルで敬遠していたんですが、このコミカライズ担当さんのイラストのファンにもなったので、とても楽しみです
というか、どちらもタイトルで敬遠していたので
お前もか!
とちょっと笑ってしまいましたw