LetLifeLoose

映画、漫画、革のブログです

時代劇への熱烈なラブレター【#侍タイムスリッパー】

今一番気になっている映画は何か?といわれたら

デッドプールも終わったし、

とにかく今SNSを騒がせているというのもあって、この映画

 

侍タイムスリッパー
f:id:belphegor729:20240915101722j:image

インディーズ作品で、お金がなくあきらめかけたところに

脚本が面白いから・・・と

 

時代劇俳優の大御所だけでなく、時代劇のメッカ

東映京都撮影所が協力した

というエピソードの強さに惹かれました

 

まぁ正直引く気満々の宣伝方法だよな、と思いつつ

やっぱりプロが認めた脚本って気になるじゃないですか

そして人情噺にも弱い

 

そして、その好評を経て、単館での上映から一気にTOHOシネマズを中心にシネコンでの公開拡大!

東映系のTジョイでも公開してたのに、なぜかニュースだとTOHO、もしくは松竹・東宝で公開ってのが多かったですねーなんでじゃろ

 

ということで、まぁ近くのTOHOシネマでも公開開始はしていたのだけれども

デップーの時もそうだったけど、こういうのにあまり大きい箱使ってくれないんだよな・・・

で、ちょうど東京に行く用事もあり、調べたらTOHOシネマズ日本橋が400席のTCXでの上映だったので、そっちで見てきました!

いやー400席ほぼ満席でしたね

地元のTOHOシネマズはおそらく10席くらいしか埋まらないと思うので(いま調べてみたけどやっぱりそんなもんだった)まぁ地域性を考えた判断で仕方がないとは思うんですけどね・・・

実際、箱のいたるところで笑い声、涙をこらえる音が聞こえてくる、感情にタッチしてくる非常に良い映画でした

ということで微ネタバレ注意

 

 

 

あらすじ

時は幕末、幕府の未来を憂う会津藩士の高坂新左衛門は、長州藩士を撃てとの藩命により

京都で同志と待ち伏せをしていた

夜道を一人歩く藩士に襲い掛かる二人

同志は早々に昏倒させられるが、高坂は一進一退の攻防を続ける

次第に雨が降り始め、次で決まる・・・と張りつめた空気の中

とどろく雷鳴

次の瞬間、高坂はなぜか江戸の町中にいた

はずが、そこは江戸でも、江戸時代でもなく

東映京都撮影所のオープンセットだった

混乱し、逃げ出す高坂

その先で、ここが未来であり、自分が命を懸けて支えようとした徳川幕府はとうの昔に滅びたことを知るのだった・・・

 

失意の中、自分を保護してくれた寺で見た時代劇に感銘を受けた高坂は

偶然のめぐりあわせもあり、時代劇の切られ役として、第2の人生を歩む決意をするのだった

 

とかそんな感じ

 

ジェネレーションギャップが笑いにも感動にもなる脚本の秀逸さ

誰もかれもが言っていることですが、本作は本当に脚本が秀逸

侍がタイムスリップします。得意の剣術で切られ役になります

 

というベースの中に、笑えるものから泣けるものまでいろんなジェネレーションギャップの小ネタを仕込んで楽しませつつ

後半の映画の撮影は、そういえばあいつどうしたんだろう、をフックに

江戸時代からタイムスリップしてしまった自分が、現代で何ができるのだろうか

という所にぐっとフォーカスを当てていく

1時間ゆっくり時間をかけて導入を描いて、そこでため込んだエネルギーを後半でどっと開放していくカタルシスは

十三人の刺客とか、

ローグワン

 

なんかを思い出しました

最初と最後がつながるストーリーテリングも秀逸

決して奇をてらってはいないと思うのだけれども、こういう王道を、下地をしっかりと積み上げながら構築していく作品逆に少なくなってきたし、王道だからこそむつかしいんだろうなとも思います

 

小ネタの一つ一つもいいですよね

個人的にはケーキを泣きながら食べるシーンが

未来を憂い、命を懸けた人間が、その先にある未来/現在の幸福に涙する姿にもらい泣きしてしまいました

 

お仕事ものとしても秀逸

最近はこういう何かを作る舞台裏を見せる作品って多いですよね。

そして名作も多い

創作活動に絞っても、

ハケンアニメ

belphegor729.hatenablog.com

や、ポンポさん

belphegor729.hatenablog.com

 

ルックバック・・・は裏側というのは違うか

とにかく、本作はそういった、お仕事ものの傑作のひとつとして確実に名を連ねたと思います

すたれていく時代劇の、さらに切られ役を中心とした

ドラマ撮影

きっと現実はもっと厳しいんだろう、厳しいんだろうなぁというのは、

私の今の仕事だとちょこちょこ見えたりはするんですけど

助監督といっても実際は監督の小間使いみたいな感じなんでしょうね

急な変更に振り回されたり、キャストの体調でスケジュール調整したり

特にコロナ禍の時は大変そうでした

そんなもろもろの中で、特に切られ役、というニッチな仕事に光を当てた作品として

ね、刀を振りかぶるときも、後ろまで剣先をもっていってはいけない、とか知らなかったね

本当の剣術使いが、であるからこそドラマ剣術とでもいうような殺陣の型に苦労する

というのは面白い視点でした

 

ある意味なろうっぽいノリところも個人的に刺さったのかも

感想整理していて思ったのだけれども、

これもある種の異世界知識でチート

なんですよね

 

普通の異世界転生、異世界転移物は

その世界にはない知識、未来の知識を持ち込んでチートするわけだけど

本作は、平和になり、必要が無くなって失われた技術でチートする

 

ラストの真剣での立ち回りなんかはまさにそう

真剣で切りあう覚悟、あの二人だからこそできる殺陣

 

真剣での殺陣、の殺陣であることを理解してなお鬼気迫る演技に心が震えました

そういった意味で、ちゃんと、模造刀での殺陣と真剣での演技にしっかりと違いを出しているのも、時代劇の業界で活躍されていたお二人だからこそなんでしょうね

 

平和な時代だからこそ、動乱の時代の殺気をフィルムに残したい

残すことで、

風見は、もう一度映画ファンの心に時代劇という灯をともしたい

高坂は、死を共にできなかった会津の仲間たちへの手向けにしたい

 

そして、あの時代、日本の未来に命を懸けた人たちがいたことを

今の人に伝えたい

そういった思いが伝わってくる素晴らしい演出でした

 

切られ役、時代劇的な殺陣へのリスペクトにも心が震えました

で、まぁ異世界転生チートとか言いつつも

決して現代的な殺陣を下に置いていないつくりなのも、凄く丁寧というか

時代劇に対して誠実で

殺気で圧倒はするものの、技術で上回っているという描写は絶対しない

高坂は殺陣の型に敬意を払い、おざなりにすることなく、真剣に習得しようとする

剣友会の関本を師と仰ぎ、その理念に敬意を表し

だからこそ、真剣での殺陣を理念に反すると暇を願う

 

そして、映画を撮り終えたらまた一人の切られ役に戻る

 

このバランス感覚が凄いと思うし

だからこそ、だからこそ東映京都撮影所は脚本にほれ込んで

撮影に協力してあげたんじゃないかと思うんですよね

こんな脚本をインディーの監督に持ってこられたらかわいくて仕方がないと思うもん

 

格好いいこと言った後で、そんな天丼しちゃうんだw

っていうところまで含めて本当に最高でした

 

最後に

武士の時代も終わり、時代劇もいつか忘れられていく

でも今じゃない

今ではない限り、襷を繋いでいく

とにかく、ネガティブな現実にポジティブに向かっていくラストが最高でした

(みんな思い出したやつ)

 

海外では真田広之が同じ志から、お金をかけ、本気で作ったShogunが同じ年にリリースされ、大絶賛され、エミー賞を総なめにしようとしている

 

belphegor729.hatenablog.com

 

ある意味でのTOPから、そして日本のインディーズ作品という、ある意味でのボトムから突き上げていくような本作の好評ぶり

 

本当に Bad Not Todayだなと、感動せずにはいられないです

本当にいいものを見させていただきました