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映画、漫画、革のブログです

結婚はしてからが始まり【#だってもう結婚してるから!】

 

1巻が無料だったので買ってみたらそのままずるずると全巻購入していた・・・

そしてまさかのおねショタ系だった・・・

 

いつも不思議に思っていた

ハッピーエンドのその後も

少女漫画のカップルたちは

幸せなのかなって

 

教師を目指す安定(やすさだ)と結婚した真陽(まひる)

結婚して5年、中学教師になった安定と、主婦として支える真陽

おいしいご飯を旦那にふるまうのが夢だった真陽は、しかし仕事を優先し、自身を顧みない夫に、ないがしろにされているようなさみしさを覚えていた。

誕生日も仕事、旅行の約束も学校行事で流され続け、せっかくの料理よりも日曜大工を優先

それなのに、その最中にかかってきた生徒からの電話には自分には見せない笑顔で答えるに至り

真陽の不安と不満が頂点に達し、パート先の同僚から娘の学生服を借りて学校に侵入するという暴挙に出る

 

旦那の授業風景を眺めて我に返った真陽が学校を去ろうとしたところに

授業をさぼっていた少年新(あらた)に見つかってしまい学生服のコスプレをしている写真を撮られてしまう

写真を消す代わりに何でも言うことを聞くよう脅される真陽


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中学教師の妻と、その生徒の奇妙な関係が始まった

 

という感じのストーリー

いびつな始まり方をした奇妙な人間関係が、巡り巡って新しい扉を開いていく

出会った二人、真陽と新はそれぞれに家庭に問題を抱えていて

 

真陽は愛し合って結婚したはずなのに、ハッピーエンドのその先は感謝もされず、見向きもされない、必要とされていないことに心を削り続けている

 

新は、両親の不仲によるストレスのはけ口として実質的家長の母から厳しい虐待を受けている

「父のようになってはいけない。完璧でなければならない」

と、期待というには重すぎるプレッシャーに身も心もすり減らしている

 

夫から、或いは母から

一番身近な存在から傷つけられている二人

 

新くんがまぁいいショタ

小生意気だけれども、それは愛情に飢えた内面を隠す仮面で

真陽が心に同じ傷を負っていることに気づいてしまった彼は、ツンツンしつつも気にかけてしまう

その感情の名前を友人に言い当てられた時の動揺する顔とか本当にごちそうさまって感じ

こういうの、こういうのが好きなんですよ

 

もともと、料理を夫に喜んでもらいたい、というささやかなことを幸せだと感じていた真陽もこんないい人いないよ?っていうくらい善人で

気にかけてくれた彼に返す言葉が謝罪ではなく感謝であることに気付いている

 

脅す子供と脅される大人

という関係から

中学生と、担任の妻

という関係に代わっていき

さらにその先がどうなっていくか、

というのは是非是非先を読んでもらいたいところ

 

マンネリ化した夫婦関係に若い子が入ってきてお互いの関係を見つめなおす

というフォーマットだとこの作品群と結構似ているんですが

belphegor729.hatenablog.com

 

真陽の旦那、安定のキャラクターがなかなかにエグイ

あこがれていた教師という職業になれたことを大事にしすぎて

教師である自分が当たり前だと思っていて

そして、教師になることを応援してくれていた真陽もそんな自分を肯定すべきと思っている

安定と一緒に幸せになりたかった真陽と

真陽に教師の妻になってほしかった安定

この二人の溝は大きく

あまりにも自分を中心にしすぎる安定から真陽に矢印が伸びることが全くないのがもういっそ怖い

 

二人が心を通わせたように見えたBBQも

安定に必要とされたと安どする真陽と

教師の仕事の仕事を真陽が支えてくれたと喜ぶ安定

同じことのように見えて、その感情の中心にあるものがずれている

1巻だけでも

真陽の作った料理に手を付けない

ディナーデートの後に夜中まで遊んでいた学生を見つけ、デートの最中なのに生徒を家に送ることを優先する

しかも、雨が降り始めたからと言って、二人で入るために出したはずの真陽の傘を同意も得ずに渡してしまうし


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挙句の果てに子供を作るかどうかも一方的に押し付けようとする

傘の下り、自分も傘持っていなかったくせに、折り畳みを用意していた真陽の手柄を横取りして生徒に説教しているのいっそホラーだよね

 

教師は忙しいから休日くらいは自分のしたいことをしていいはず

教師なんだから、生徒の安全は一番に考えるべき

家に一人でいる真陽は子供の面倒を見ればさみしくない(と同僚が言っていた)

 

教師である安定を真陽は肯定してくれる”はず”という期待

子供の話も彼女のため、そうす”べき”という押し付け

 

真陽とすれ違っていることに気づいてはいるし、どうにかしないととも思っている

気づきを与えられる機会も少なからずあり、しかも彼自身その機会を活かす意思もあったのに

ことごとくはずれを引き続けてぞっとする

ここまで酷い勘違いはフィクションだろうと

 

思うんだけど

ただ、これ本当に他人事と笑えるのだろうか・・・とも少し思うんですよね

 

仕事で疲れた時、そっとしてほしいと思うこともあるし

ごはん用意されたって食べる時間じゃないよと思うこともある

謝ったんだから許してくれてもいいんじゃないかと逆切れしそうになることもある

 

流石に言わないけれどね

彼はさらに、重い認知バイアスで真陽のことを見ていないことにすら気づいていないのだけれども

なんか最近も些細な言葉づかいで奥さんを傷つけたりもしていて

歩み寄ろうとして”あげた”んだから相手も歩み寄る”べきだ”

そう考えることも正直多々ある

そう考えてしまった後、実行に移すかどうかはもちろん別問題

 

ただ、気づけたらら自制するけど、気づかず行動に移して、傷つけることも少なからずあるので、安定のことをあまり他人事のように突き放すのもよくないんだろうなぁとも思う

 

1巻2巻は前振りで、もちろん2巻までも面白いんだけど、本格的に話が進んで面白くなるのは3巻なので一気にサクッと読み切ってほしい

 

私も普通に寝る前に読み始めてそのまま止まらず変な時間に寝ることになってしまいましたw

 

 

こっからネタバレ感想

はい、本当に良いおねショタでした

最初は生意気だった新君だけど、それも肝心なところに”気づける”子という描写がギリギリのところで不快感を軽減していて

真陽のことを信用して頼り始めた2巻

浅香に真陽のことが好きなんじゃないかと問われて意識し始めた3巻

どんどん二人の関係が深まっていっていくのが本当に尊い

好きだからこそ安定と幸せになってほしいと自分の気持ちを閉じ込めようとする新も尊いし

真陽のことを見ようとしない安定に啖呵を切る新も尊い

彼を中心に、”不倫”をうまくテーマに組み込んでいるもよくできているなと思っていて

恨んでいた父と同じ状況に陥っていることに気づいたり

であるからこそ真陽を母と同じ目には会わせないと小さな腕を目一杯広げて真陽を守ったり

 

真陽は最後まで、大事ではあるけれど恋愛対象とは見ていないんですよね新のことを

ただ、大事であるからこそ新が求めてくれるならやぶさかではないという彼女の考え方も、割と今までにない感じが好き

なんというか、博愛ですよね

彼女にとってはそれが普通なのかもしれないけれど、すごくいいキャラクターに育ったんだな、って思います

新の優しさに応えたい。そのために、お母さまにも幸せになってほしい

一つもらったら、一つ返す

返してもらったら、また返す

そういう正のキャッチボールを続けた結果が二人の関係性につながっていく

逆にもらいっぱなしが当たり前になって、投げてこない真陽に問題があると彼女のやさしさに胡坐をかいていたのが安定だと思うと

 

まぁ、うん

いろいろ言いましたけど

やっぱり最低だと思いますよ

 

手遅れだったとはいえ、反省できただけ木村イマさんの作品に出てきたダメ男どものほうがまだましというか

 

関係改善のために自分がセッティングした場なのに

自分にとって都合のいい妻に”もどれ”といい

 

本当に自分のことを理解してくれていたのが誰か

生徒に突き付けられた後ですら

最後の最後で真陽に寄り添わず、大事なものを取りこぼしてしまう

 

ここまでないがしろにし続けて、今更これからは仲良くなんて虫が良すぎるのもありますね

 

女心がわからない俺でもわかるってといいながら

不和の原因を真陽にあるとナチュラルに決めつけるのも空恐ろしさがありましたし


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結婚前の気持ちに戻るといわれて、付き合うよりも前に戻るつもりだと思ってしまうのも、なぜ離婚ではなく別居なのか、真陽の気持ちがどこにあるのか、冷静になろうと言っているのに逆に血が登ってしまってるっていうね

 

挙句の果てに、不倫相手にはめられて職場すら失うのはもう本当に人を見る目がなさすぎるというか

安定のことを一番大事にしてきたのは誰か

大事にされていることに甘んじてないがしろにし続け、

彼女の言葉を自分だけに都合がよいように解釈し安易に流された罰

なんでしょう

 

個人的には、女性の同僚に誘われていく先が、奥さんがデートに誘った店かよ


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っていうのがもうこいつのダメさを如実に表していた気がする

すげぇよ

凄すぎる

 

どこで気づけば間に合ったんだろうって言っているけど、


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安定が気づいたのは

 

真陽の心がもう安定から離れた

 

ことであって

どうしてそうなったかについては、いまだに気づけていないと思うんだよね

夫婦の会話が”なくなった”と””も思っている時点で自分の責任を否定しているから

だからどこからやり直しても、多分結果は変わらないと思う

 

本作結構、前回紹介した「女ともだちと結婚してみた」と対照的な作品だと思っていて

 

belphegor729.hatenablog.com

 

夫婦という”契約”で繋がった二人と、縛られた二人

明と暗だと思うんですよね

 

夫婦だからできたことを尊び、夫婦であるために変わろうとする二人と

自分の妻はこうあるべき、彼の妻だからこうあっても仕方がない

と変われない夫と、変わることをあきらめる妻

多分、結婚がスタートだった瑠璃子、くるみ、そして真陽と違って

安定は結婚がゴールだったんでしょうね

 

なんにせよ、個人的にはすごく爽やかで素敵なハッピーエンドになったと思っているので

うーん

このハッピーエンドの先も、ちらっとでいいのでちょっと見たいなぁ