私の好きな映画監督に、「今敏」という方がいまして
まぁ、好きな、というほど作品を見ているわけでもなく
何よりもそこまで作品が多くない
何故かというとちょうど2010年にこの世を去っているからです
今敏監督について
没後10年の2020年に、雑誌で特集が組まれておりまして
Kinlde版を購入して読んでいる最中なのですが
今監督、もともとは漫画家だったそうで
「AKIRA」や
「スプリガン」
で有名な大友克洋さんに師事するうちに映画の世界を主軸に活躍するようになったそうです。
夢と現実の狭間を描くことに定評のある監督で海外の関係者にもファンが多くいるそうで
一説によるとあのクリストファーノーラン監督の「インセプション」に影響を与えていたりするとか
また、ナタリーポートマンがだんだん精神が崩壊していくバレリーナを演じて話題になった「ブラックスワン」の監督であるダーレンアロノフスキーは今監督のファンを公言し
ブラックスワンの前作である「レクイエムフォードリーム」は
今監督の初監督作品である「パーフェクトブルー」にインスパイアを受けているとのこと
ブラックスワンもパーフェクトブルーとの類似性をよく指摘されています
パーフェクトブルーめっちゃ見たいんだけど絶対怖いんだよなぁ。メンタル削られる系はMP消費するからなかなか勇気がわかないんだよね
個人的には、たぶん影響を受けているわけではないと思うんだけど、
サカナクションの「バッハの旋律を夜に聞いたせいです」のPVは似た空気を感じますね
サカナクション - 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)-
私が見た作品は
恐らく一番有名な代表作の「パプリカ」
クリスマスシーズンになると見たくなる映画「東京ゴッドファーザーズ」
そして今回ご紹介する
「千年女優」
です。
前々から見返したいと思っており
PrimeDayに合わせてブルーレイを購入して久しぶりに視聴することができました
ストーリー
若いカメラマンの井出と映像制作会社を営んでいる立花源也は
昭和史に残る名女優でありながら30年前にスクリーンから姿を消した
藤原千代子にインタビューする機会を得ることができた
藤原千代子の大ファンである立花源也は
インタビューの前にあるものを渡す。
それは千代子があるとき無くしてしまった鍵だった
千代子が鍵にまつわる思い出を語り始めると、
立花と井出は彼女の思い出のなか
さらに、映画の世界の中へと迷い込んでいくのだった
本作の特徴
本作は3層のレイヤーから成り立っています
1つ目は今まさにインタビューをしている現在のレイヤー
2つめが千代子が回想する過去のレイヤー
3つめが千代子が出演した作品のレイヤー
この3つのレイヤーが境界を失い混ざり合っていく
千代子の思い出の話だと思いきや出演作の名シーンだったり
回想にのめり込んでいくうちに急にふと現実に戻ったり
藤原千代子という女性の人生が、彼女の作品とオーバーラップしていく形で紡がれていきます。
彼女の人生は、女学生時代にあった「鍵の君」を追いかける人生
戦中思想犯として追われた鍵の君を匿い、ひとめぼれしたことで
政府から逃げる彼を追いかける人生を歩むことになります。
鍵の君をさがし求める彼女の人生が、様々な出演作のシーンによって描かれていくんですね。
主人公の人生はまさに作品とともにあった、という点で
ボヘミアンラプソディーを彷彿とさせますし
主人公の人生と作品をオーバーラップさせる演出はロケットマンも同じ手法ですね
彼女について無知な観客たちは
必然カメラマンの井出と同じ目線で作品を見ていくことになります。
また、作中で千代子が出演する作品の多くは元ネタがあるそうで
往年の映画ファンにもたまらない演出となっているそうです
私なんか映画ファンとしても新参なので
昭和映画、というものに対しての知見も全然ないですが
それでも、
あぁ、なんかそれっぽいな
とノスタルジックな気持ちになります。
監督の深い知識のなせる業ですね。比較動画なんか見るとよくわかります
オマージュに溢れる映画「千年女優」【Millennium Actress】
実際の映画のシーンをつなぎ合わせて藤原千代子の一生を作り上げてしまったようなものですからね。
音楽について
今敏監督作品を語るには、やはり音楽についても語らずにはいられません。
本作の楽曲を担当しているのは平沢進さん
P-MODELというテクノバンドのボーカルで
かなり独特な世界観の音楽を作られている方です
平沢進さんについてもアーティストでファンの方が多く
たとえば漫画「ベルセルク」の三浦建太郎さんだったり
(アニメ作品に楽曲を提供してもらっています)
BERSERK ~Forces~ by Susumu Hirasawa
漫画「けいおん」のかきふらい先生だったり
(主要キャラの名前がP-MODELのパロディ)
間違えてないか?私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2009年10月26日
今敏監督ももちろん平沢進の大ファンで監督からのラブコールで本作より複数作品で楽曲の提供を行っています。
作中は昭和の映画のはやりもあって時代劇が多いにもかかわらず
平沢さんのテクノなミュージックが変にマッチしていて面白いです。
テクノでありつつもリアルなサウンドにも敬意を表しているからかもしれませんね。
今×平沢というと、どうしてもその演出の素晴らしさから
パプリカの「パレード」が有名ですが
藤原千代子の人生を見届けた後に盛大に輪廻を歌う本作のエンディング
「ロタティオン(Lotas-2)」
もぜひ多くの方に知ってもらいたい名曲です
12 - Rotation (LOTUS-2) (Millennium Actress)
Lotas-2とあるように輪廻(蓮)をテーマに1から3まで楽曲がありますが
どれも素晴らしいので興味を持たれたら是非聞いてほしいですね
今監督自身もこの曲に見送られながら来世に旅立たれたのだとか。
二人の友情を感じます
最後に?
ということで、映画
「千年女優」
のご紹介でした
今監督は、代表作の「パプリカ」でもそうなのですが
現実と空想の境界がなくなっていく世界を凄く肯定的に描く方なんですね
パプリカって聞いたことあるなぁ、でもちょっと映画としてのインパクト強そうだよね
と思ったりする方は、これか、東京ゴッドファーザーズあたりから見てみてほしいですね!
(ネタバレ・ラストの解釈について)
最後の最後に、本作を見るとどうしても談議したくなるのがラストの千代子の一言
まだ見てない方、見てから先を覗いてみてくださいね!
できれば見たうえで談議に参加してほしいですねw
ということで、
彼女の最後のセリフ
「どっちでもいいのかもしれない。だってあたし、あの人を追いかけてるあたしが好きなんだもの」
人生をかけて追いかけていたはずなのに、そういうこと言ってしまっていいの??
とかなり賛否両論と聞きますし
キャストからはあまり受け入れられなかったとも聞きます
監督は”あえて”はずしたんじゃないか、とか、とか、とか
個人的には、鍵の君なんてとうにいない、そんな事とっくの昔にわかっていて
それでも生きていかないといけない、女優を続けていかないといけない自分を奮い立たせるためのキーワードだったんじゃないかなぁと思うんです
それを演じ続けられたからこその昭和の大女優だったのだろうし
演じられなくなったから表舞台から去ったのかなと
もっと妄想を膨らませば、
そもそも「鍵の君」なんていなかったのかもしれない
彼女がなくした鍵は確かに大切なものだったけれど、彼女の思い出は彼女しか知らない
一時期一緒に仕事をしていた立花だって、遠巻きに眺めていたわけで彼女の何かを知っているわけではない
彼女の語る過去が真実だなんて証拠は何もない。
だって彼女のいない過去のシーンもあったしね。
彼女の語った過去が、まるでダークナイトのジョーカーのように全てうそだったとしてもおかしくはないと思うんです
だって彼女は世紀の大スター、名女優ですからね
みんな騙されているのかもしれないですよ。彼女の演技に