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ボヘミアンラプソディとは比べてしまうよね・・・【ロケットマン ばれあり感想】

 

 

シャーロック・ホームズ3の監督に就任したデクスターフレッチャーの「ロケットマン」が公開されたので見に行きました。

belphegor729.hatenablog.com

 

「ロケットマン」はミュージシャン 「エルトン・ジョン」の半生を、

「ボヘミアンラプソディー」のデクスター・フレッチャー監督

「キングスマン」のタロン・エガートン主演で映画化した作品になります。

 

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ボヘミアンラプソディーと同じ監督で、しかも題材も同じ、ミュージシャンの半生と言うことで、注目度も高い作品だと思います。

   ミュージシャンの映画だと、ボヘミアンラプソディーのほかに、ジェームス・ブラウンをブラックパンサーのチャドウィックボーズマンが演じたものを見て、どちらもとても面白かったのでロケットマンも結構楽しみだったんですよね。

 

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見終わった感想ですが、うーん。いまいち乗れませんでした。。。
一言でいうならカタルシスが足りない。

 

親から愛情を受けずに育った主人公が、類い希な音楽の才能でスターダムをかけ上がっていくが、セクシャルマイノリティである孤独をマネージャーにつけ込まれ、さらに孤独を深めていく。
というのが大まかな流れだと思うんですが。

問題があるなぁと思った点は大きく4つで

1. 一つ一つのエピソードがあっさりしていて、感情が見えない
2. 勧善懲悪的楽しみがない
3. クライマックスがない
4. そもそもボヘミアンラプソディの後にこれは分が悪すぎる

 

 

あえて4から話しますが


ボヘミアンラプソディーの後は分が悪すぎる

 


これが一番大きいなと。
私のあらすじ読んだだけでも同意してもらえると思うんですけど、やっぱりいくら実在の人物の伝記とはいえ、フレディマーキュリーと被りすぎなんですよね。
出自から孤独を抱えていて(フレディは移民、エルトンは家庭不和)
たぐいまれなる才能でスターダムにのしあがるが
セクシャルマイノリティであることをマネージャーに利用され、過去のプロモーターと縁を切らされ
孤独を深めるなかでセックスと酒に溺れていく
マネージャーが問題の中心だと気づいて、旧来のメンバーとよりを戻す。
 
似すぎなんですよねぇ。

 

 あまりにもそっくりすぎるシナリオで、ボヘミアンラプソディと比較されるのは必至だと思うのです。
 ですので、私の批評もボヘミアンラプソディとの比較が多くなりますのでご容赦ください。。

 

一つ一つのエピソードがあっさりしていて、感情が見えない

 

 

ロケットマンを見てまず思ったのが、物語に起伏が少ないんですよね。
そして、それの理由が、エピソードを詰め込み過ぎている事、ミュージカル調で、歌いながら次のシーンに移るため、エピソードで起きたことに対する総括というか、感情の移り変わりが見えづらいことだと思います。


幼少期のクライマックスとして国立音楽院での生活があるのかと思いきや、教師に認められた後すぐに青年期に移ってしまって、国立音楽院での生活が、どのようにエルトンの音楽性にかかわっていったのかがわからない。


中盤のハイライトのはずのエルトンの自殺未遂も、病院に行ったかと思いきや入院も闘病のシーンもなくライブシーンにシームレスにつながってしまう。
自殺未遂の動機はわかりますが、自殺未遂に至ったエルトンの感情の揺れ動き、自殺未遂がエルトンにどう影響を及ぼしたのか。そういったシーンごとのまとまりが失われてしまっています。


自殺未遂というイベントすら淡々としてしまって、事実のはずなのに、エルトンに自殺未遂をさせるためによく趣旨の分からないエルトンの自宅解放パーティーが勝手にマネージャーによって仕組まれていて、すごくご都合主義的。
マネージャーが何を考えているのかもよくわからないんですよね。マネージャー利己的な性格のはずなのに、エルトンに黙ってイベントを開いた理由がわからない。いやがらせ以外で。

 

一番淡々としていたのが奥さんとの結婚ですよね。

まさか出会って次のシーンで結婚してさらに次のシーンで離婚するとは・・・
悪い意味で予想外でした。結婚生活という大事な下りでエルトンの感情が全く見えない。


・ゲイなのになんで結婚しようと思ったのか
・なぜ離婚したのか、何年結婚生活を送ったのか。

折角エピソードを入れるのだから、そのエピソードに意味を見出してほしいです。触れておかないといけないのでとりあえず触れてみました。という感じがしてならないです。


やっぱり駄目だった、を別の部屋から出てきて、離婚の話をすることで簡潔に表そうとしたんだろうけど、正直笑えないジョークにしか見えなかった。

 

ボヘミアンラプソディでは最愛の女性との関係性はとても長い時間を費やしていました。そこには喜怒哀楽のすべてがあって、正直婚約指輪を渡すシーンは好きなシーンの一つですし、指輪を付けなくなってきたときのフレディの悲哀はより際立つものでした。彼女との電話のシーンも印象的でした。

   またこの出来事がフレディの孤独を深める要因であることもしっかり描かれています。
 
しかし、ロケットマンは結婚に至る感情の盛り上がりを書かないため、「喜」の感情があまり伝わってこず、結果離婚という「哀」の感情がうすい。
 「でしょうなぁ」
という冷めた感情しかわかなかったです。

 

 勧善懲悪的楽しみがない

 


 基本的にロケットマンに登場する人物は過剰に記号的です。
 こどもに愛情を向けない両親。愛情は向けているけど、その空気につぶされそうな祖母
正直、3人の内心をミュージカルで直に歌ってしまうのはどうかなとも思いましたが、特に両親の2人はあまりにも記号的。


 愛情に飢えた子供時代を描こうとしてあまりにも悪人に描きすぎている感じがします。彼らにもそうならざるを得ない理由があったのではないか、愛情のなさはエルトンジョンが大人になってからも変わらず、

 母親はお金をせびりながらエルトンジョンを迷惑な子供だと言い放つ。
酷い言い方だけど、せっかくの金づるなんだからもっとうまくハンドリングすればいいのに、と思うし、離婚の原因お前じゃん。エルトンの醜聞の原因の何割かはお前やぞ、偉そうなこと言ってんじゃねぇと思うんですよね。

 

 父親は2回目の結婚で良好な親子関係を築いていることを隠そうともしない。
父親は父親で、何であそこまで旧家族たちに冷たくできるんだろう。2日目の結婚で、エルトンに対してこうしてあげればよかったとか反省することはなかったのか

 

 なんか、両親にはどうしてもエルトンを許せない理由があるんじゃないかと勘ぐってしまう。

 ただ、まぁエルトンの視点では大人になっても両親から愛情をもらえなかったのは事実なので、そこを捻じ曲げるわけにもいかない、観客の感情を揺さぶる、という点ではうまくいっているのだとも思います。

 が、観客を負の感情に持っていくのであれば、そこから正の感情へはじけるカタルシスが欲しいんですよね。
 

 関係の改善であったり、両親への仕返しだったり。
 しかし、史実として改善はなく、両親という存在に対してエルトンは一方的な愛情を持っているために仕返しという線もない。

 両親は言いたいことだけ言ってフェードアウトしていくので、幼少期からのトラウマからの解放もない。
 え?最後のシーン?いや、ダメでしょ。トラウマから解放されるきっかけありました?

 1でも書いたけど、解放に至る理由が明確にかけてない。だからカタルシスにつながらない。

 

 これは作中で明確に敵として扱われているマネージャーもそうで
 私が見た中では、彼にはやられっぱなしですよね。あれだけ雑に扱われて、縁を切ることもできない。
 基本的に悪役として設定されている人物たちに対して、やり返すことができていないので、上映中にたまっていたフラストレーションが解放されなかったのが見ていて不満でした。

 

 また、友人であるはずのバーニーも、闇落ちしたエルトンを改心させるようなポジションにいない。

    彼がエルトンジョンに対してフォローをしたり、説得をしたりするシーンは、一緒に逃げようといった1回だけ。
   そもそも前に出るポジションではないので、エルトンが忙しくなるにつれ仲がいいというシーンがどんどん減っていくんですよね。彼との友情に時間をさく余裕が映画のなかでなくなっていってる。

 それに普通であれば自殺未遂をする直前のシーンで説得もせず見限るのは親友のすることではないと思うので、親友感がどうしても薄い。

 事実であるとしても、抑圧と解放の組み合わせが必要だと思うんです。
和解のシーンもあっさりしていましたね。やっぱり盛り上がりが足りないな、と思います。あっさりさせることそのものが悪いわけではないと思うのですが。

 

 やはり、この点でもボヘミアンラプソディは秀逸だったと思います。
悪役として設定されているマネージャーはフレディの怒りをかって追い出されました。また、その後のテレビでインタビューを受けるシーンは「哀れな小物」として演出されていたと思います。
 そして、敵として設定されてはいなかったとは思いますが、不理解者として青年期の対立構造に置かれていた父親に対しては、フレディの憑き物が落ち、父の「信条」を理解することで、フレディが父の思いに寄り添うことで、感動的な「和解」が最後にありました。私はそこで息ができないくらい泣いて、このシーンだけをもって名作だったと断言できるくらいです。

・クイーンのメンバーとの対立と和解も、対立をエモーショナルに描き、
・マネージャーとの感情的すぎる決別を経て
・とてもあっさりした、静かなエイズの診断
・そこで憑き物が落ちて、照れ臭いメンバーとの和解。

 

 和解のシーンはにやにやしまいました。

   それは、クイーンのメンバーが常にフレディを思いやり、また対等の存在として映画のなかで描かれていたからだと思います。
 エイズの告知も、怒涛の感情のうねりを経ているからこその平静であり、病院の少年からのコールに静かにレスポンスするあのシーンが際立っています。

 対立構造に対して、しっかりとした決着をつけています。

 

 逆に、対立構造に対して、明確に決着がなかったというのが、私がロケットマンを見てすっきりしなかった理由です。

 

クライマックスがない

 


 ロケットマンのクライマックスはどこだったのでしょうか?
ボヘミアンラプソディであれば、明確に「ライヴエイド」
をクライマックスに持っていく形でストーリーを構成しています。
 しかし、私はロケットマンには明確にクライマックスと呼べるイベントを見出せませんでした。
 これは1につながる不満ですね。

 おそらく矯正施設から退所するところがクライマックスだったと思うのですが、ここのエピソードにつながりを見出せなかったので、最後のエピソードまでに感情のボルテージを上げることが上がっていなかったうえに、やっぱり矯正施設での解脱もちょっと淡々としていた気がします。なぜトラウマから解放されるに至ったのか、もちろんリハビリに来て、自分を見つめなおしたからだと思うんですけど、もうちょっとリハビリでの告白のシーンを増やして、自分を見つめなおしているシーンが見たかった気もします。

 

 

 もちろん。すべてが悪かったわけではなく、奇抜なコスチュームでライブ会場に向かうと思いきや、ドアを開けた先がセラピーっていうんですかね。矯正施設というのも意外性があって面白かったですし、告白が進むにつれコスチュームを脱いでことで素の自分に戻っていくことを暗示しているのもうまかったと思います。
 タロンエガートンの演技も歌声も素晴らしかったです。まぁだからこそ怒りの演技ばかりでもったいないな、とも思いましたが

 

 

まとめ

 

タロンエガートンの演技は素晴らしかったけど、ストーリー構成に難があって手放しで称賛はできなかったです。
もうちょっとここのエピソードに起承転結が欲しかったなぁ
起承転起承転と生き急いでいる感じがしてもったいなかったです。

 

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Rocketman

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 ちょっとシャーロックホームズ3が不安だなぁ・・・

 

 

 

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