ある意味で
庵野監督「シン三部作」といっても良いかもしれない
昭和の特撮を庵野監督の手でリメイク第2段
シン・ウルトラマン
庵野監督と言えば、学生時代の自主性作映画でウルトラマンもとっていたわけで
シン・ゴジラの成功でオファーが来たことは想像に固くない本作
色々と特撮オタクの庵野監督の夢が詰まったであろう本作
見に行く時間作れてよかったよぉ
ということで感想です
シン・ゴジラと地続きな世界観、空気感を出しつつもシン・ゴジラとの決定的な違いが足を引っ張っている感
リアルを意識した世界観設定に唸らされました
基本的には、シン・ゴジラと同じアプローチで、特撮のキャラクターがリアルな世界観に存在したら、というアプローチで
理詰め理詰めで世界観が構築されていくのが非常に心地が良いです
目で追うのが困難なくらいぱっぱっと流されていく”禍威獣”たちの顛末のダイジェスト感に苦笑しつつ
禍威獣に対処するために防災庁が設立され(細かいところだけど、省じゃなくて庁な所も丁寧な描写に感じて好印象です)
さらにそのなかに禍威獣特別対策室、通称「禍特対」があると言う立て付けがよく考えられている
何よりもこういう当て字はオタク大好き
また、リアルな世界観で自衛隊の他に戦力を持てないだろうことに対する苦肉の策でもあるとは思います
で、個人的に良いなと思ったのが
この禍特対が自衛隊とちゃんと密に連携をとっているところ
それが、ダイジェストのあとの最初の禍威獣との戦闘でしっかりと示されている
自衛隊の現地本部に禍特対が来て指揮権をスムーズに譲渡するシークエンス
盆百の作品だったら、自衛隊目線で嫌みったらしく上から目線で禍特対が幅を聞かせるか
あるいは禍特対目線だと、真に禍威獣対策を考える禍特対にたいして、面子が邪魔をして素直に指揮権を渡さない自衛隊とかやりそうな所だけど
スムーズな指揮権譲渡、躊躇無い非常事態宣言の発令、そして禍威獣への攻撃と
ストレスなく見たいものを見せてくれる感じ
山本耕史さん最高!
このままの流れで良いところをあげていくと
ベテラン俳優陣の演技は神がかっていましたね
特に、メフィラス星人役の山本耕史さんの怪演が光っていたのは見たかたには異論はないと思う
個人的には浅見に対する謝罪のボイスメールの最後でちゃんと"拝"を入れていたのがいかにも分かってるなお役所仕草で最高でしたw
レトロな演出が琴線を刺激する
本作、ウルトラマンやカイジュウ、外星人をフルCGで作成していますが
その上で、あえてミニチュアのような動きをさせているのが、
あぁ、庵野監督っぽいなぁと思ったり
最初、ウルトラマンが登場したシーンでピポパポおとをならしながら回転したり
最後のブラックホールから逃げるシーンもそうでした
最初のスペシウム光線を放つところが代表的ですが
ごりごりのCGで魅せる所と、あえて既視感のある動かしかたでノスタルジィを感じさせるところと
案配が絶妙
じみに音楽もよい
音楽自体もよいのですが、その構成も素晴らしくて
序盤、禍威獣たちと戦うところから、初めての外星人との戦いまで
過去の円谷作品で使われてきた音楽を使っていき
最初のクライマックスであるVSメフィラス戦で
庵野監督と昔からタッグを組んでいる鷺巣詩郎の、コーラスが特徴的な楽曲が鳴り響き
そして、ラストのゼットン戦では集大成とばかりに二人の音楽が混じり合い、融合されたような音楽で盛り上げる
思わず感心してしまいました
禍特対の存在を持て余していた感が否めない
シン・ゴジラとシン・ウルトラマンの一番大きな違いで、気を付けないといけないところがあると思っていて
それをシンゴジラのポスターになぞらえると
シン・ゴジラはまさに
虚構(ゴジラ)VS現実(自衛隊)
だったのにたいして
虚構(禍威獣)VS虚構(ウルトラマン)
と、なっていて
そのままシンゴジラのフォーマットを持ってくると危険だと思うんですよ
なんでかっていうと、
シン・ゴジラのカタルシスって
フィクションの存在に、現実のリアルな戦力でどこまで戦えるか
勿論最後はフィクションの兵器で打倒しましたけど
それに至るまでの足止めだったり、兵器を投入するための装備だったりは、現実にあるものを使ってやっていたわけで
さらに言えば、その兵器を使用するまでの政治も楽しむところだったんですけど
今回に関しては、ここで禍特対が戦力を持たないことがかなり響いていて
結局、ウルトラマンでないと打倒できない禍威獣は自衛隊の装備では太刀打ちできず
それどころか米軍の装備ですら歯が立たない
外星人に至っては、もうすでにウルトラマンに頼り切ってしまっている状態であるという点を加味してもなお、自衛隊では知性ある外星人に全滅は必至
”科学”特別捜査隊 の持つ特別な装備というフィクションであっても
人間が扱う、という点でまだ下剋上の雰囲気を出すことができていたのですが
ゴジラ級の禍威獣が連続して出現してしまうと、
たとえ1体1体は勝てたとしても、人間側は毎回毎回総力戦で息切れしてしまう
最初に「人間では禍威獣、外星人に勝てない」
という揺るぎない状況が提示されてしまっているため
弱いものが強いものを打倒する
という
シン・ゴジラにはあったカタルシスが
シン・ウルトラマンにはなくなってしまったんですよ
既に外星人によってプライドを打ち砕かれていた日本政府は
対等な交渉をする気がまったくない
淡々とした政治描写がここでは悪い方向に作用してしまっている
ここでも下剋上のカタルシスがないんですよ
で、シン・ゴジラと比べても退化しているなぁと思ったのが
見える範囲での大臣に若手も女性もいなかったこと
シン・ゴジラの女性の防衛大臣は結構攻めたな、と思ったんですけどね
勿論、基本的に別世界(マルチバース?)ということで納得してもいいんだけど
竹野内豊さん演じる政府の男でシン・ゴジラとの世界観の共通性をにおわせていてこれなので、時代が進んで政治が退化しているように見えちゃうのは、むしろ竹野内豊を似た役で出したのは失敗ではないかと・・・
で、戦闘力を自衛隊に任せてしまった禍特対は
禍威獣打倒のための、ウルトラマンに対する補助戦力としても機能せず
ウルトラマン登場後は政治に振り回される役人以上のポジションはなかったなぁと・・・
自分の尻をたたいて自分を鼓舞する長澤まさみと
「頑張って、ウルトラマン」というbotになってしまったそのほかメンバー
正直余り好きな演技ではなかったけど、タキ君の言う通りなんよね
室長ふくめて5人しかいない禍特対のうち2名が学者で
人間には手の負えない科学力の戦いになっているせいで完全に戦力外
賑やかし要員と化しているんですよねぇ
悲しいことに二人の活躍は最初のダイジェストで文字で説明されるのみだった
ラストのゼットン戦も
世界中の学者集めてディスカッションして
(あそこのタキ君の英語もなんかイラッとするんだけど)
導き出した答えは
「ウルトラマンの変身アイテムのスイッチ2回押す」
というのも拍子抜けだし(正確にはスイッチを押すタイミングだとか突撃のタイミングだとかも計算していたんだろうけど)
結局ウルトラマンだよりかよ
というのも正直残念
もしかしたらウルトラマンのデザインのように
原案ではそうだったとかあるのかもだけど
ウルトラマンが勝てなかったゼットンに
人間が科学の力で打倒する
というのが原作のカタルシスだったと思うんだよねぇ・・・
そういった意味で、ゼットンを、ウルトラマンどころか人間の力では到底打倒できないサイズにしてしまったのは個人的には失敗だったんちゃうかな?もうちょっと良い倒し方を考えてほしかった
ゼットンVSウルトラマン戦は
ガーディアンズオブザギャラクシーのネクロクラフトVSノヴァ軍を彷彿とさせて、戦闘シーン自体は凄く好きなんですけどね
まとめ
凄く面白かったけど、納得いかないところも多く
構造的にシン・ゴジラ越えはむつかしかったな
という印象
ゼットン攻略のため人間が知恵を絞る演出も
余りにも内容を詰め込み過ぎたせいで、サクッと流してしまったせいで
ゴジラ打倒のため頭をひねらせ、最後に折り紙でブレイクスルーするあのカタルシスには程遠い
庵野監督のシン・三部作の最期、仮面ライダーは、今度は前2作とは違って等身大の戦い
こう見るとうまいこと昭和の特撮はすみわけができていたんだな
何やかんや楽しみですね
どうでもいい話、地元で撮影されていたらしいです
ぼへーとスタッフロール見ていたんですが
撮影協力に私の住んでいる「市原市」の名前が!
どうも山本耕史さんが最高に胡散臭い笑みを浮かべながらブランコをこいでいたあの公園、というか団地?
がそうらしい
予告でも60秒前後のところで流れていますね
こういうのちょっとうれしいw