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映画、漫画、革のブログです

奇抜なアイデアは丁寧なシナリオでこそ輝くと思うのです(ドラゴンクエストばれあり感想)

   子供の頃はあまりゲームをさせてもらえなくて、と言うか一日1時間で何をクリアできるねん!

  って感じなのですが、まぁそんな感じで実はドラクエやったことないんですよ。

やったことないくせに、小~中学生の頃は「ギャグ王」と言うエニックス系列の漫画雑誌をかっていて、ドラクエに関してはなんと言うか中途半端な知識量で今に至っています。

   ドラクエ5も、やってみたいとは思いつつ手つかずで、本作も見るかなぁどうしようかなぁといった感じだったのですがTwitterで知り合った方から

「この映画については感情を共有したいので是非みてほしい」

と言われ、そうなるとちょっと気になってきたので見に行ってきました。

 監督年末にルパンのCG映画も公開するみたいですね。
 ドラクエと同時期に別の作品も公開しているし、いくらなんでも同時進行すぎやしませんでしょうか。
 ちょっと不安です。
 

 で、残念ながら、不安は的中しました。


  目にはいる情報が基本的にネガティブなものばかりだったのも良くなかったかもしれません。純粋に楽しむと言うよりは、どう評価しようかと言う気持ちで見てしまった感もあります。

   面白かった方には申し訳ない。ドラクエ5に思い入れのない人間のなので、良い点など教えていただけると嬉しいです。

 

 で、感想ですが・・・

 そもそも論として、大作ゲームを丸々映画化するのに2時間程度では間違いなく足りないのですが、足りてる足りてないの問題ではないなと言うのが正直なところです。

  

  見てまず気になったのが、演出が古い

 フローラとの会話が特に顕著なんだけど、そこまでステレオタイプなデレ演出しなくてもと思ってしまったり、

 サンチョがケンコバさんなのも、個人的にはちょっときつかったです。

 どうしてもケンコバさんのかおがちらつくのもそうですし、ケンコバさんのトークって、それこそこてこての古い演技で笑わせてくる人で、本作でもかなりこてこてな話し方をしてると思うんです。

 すんなりはまった方はそのまま違和感なく見られると思うのですが、引っ掛かってしまうともうどうしても駄目で。

 全体的に芝居がかった演技に見え、また私の目からはその芝居もあまり洗練されているようには感じず、見ていて少し厳しかったです。
 

   ただ、正直そういった演出面の問題については些細なことで、個人的に本作の一番ダメなところは、いろんなことにたいして伏線と言うか、予想外な展開に対して説得力を持たせる努力が感じられないところです。

 

  最初に気になったのは嫁選び。
 気になったというか、脱力してしまったといいうか
 
  公開前の情報で、ビアンカフローラ論争に終止符を打つといっていた気がするのですが、これで打ったことになるのでしょうか?

 

 

  フローラを選ぼうとしたけれど、主人公がビアンカのことが好きだと気づいたフローラが自ら身を引いた、という事でどちら派の顔もたてたことになってるのかもしれないですが、なんかフローラに汚れ役を押し付けたようで個人的には頂けなかった。。
 ほら、フローラもビアンカと主人公の中を祝福しているのだ。 
 フローラ派もフローラの意思を尊重しなよ。
 「大人になれよ」

  と言われている気分。

 

   何よりも、求婚しておきながら婚約破棄とか、

 

   あの、その

 

 

   普通に人として駄目でしょ


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   もはやどちら派とかそういう問題でもなく

 

    信義

 

   の話だと思うのです。

  あと、フローラのいる町でビアンカに求婚するな!

  失礼だ。もう、二倍失礼…

 


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  この時点で私のテンションは駄々下がりです…
 ゲームでもそうだったのかしら、ビアンカを選ぶときに、一度フローラと婚約してから破棄とか、ゲームではしてないですよね?


 フローラを好きな理由が、自己暗示。というのもひどい話です。
 フローラは自己暗示をかけないと好きになれないくらい魅力がないの?
 そんなことはないでしょ?まぁ自己暗示かかってる理由は後から出てきますが・・・


 さらに本件はビアンカに対しても失礼。
 主人公がビアンカを選んだ理由が、これまでの冒険の中で培ってきた関係性ではなく、純粋に中の人の趣味趣向ということになります。


 関係性がちゃんと描けていないので、関係性を重視しての選択だとしても納得には程遠いですが。
 幼少期に一緒に遊びました。+1日~数日程度一緒に魔物を倒しました。程度で、婚約を破棄するほどの硬い意志をもってビアンカを選択するモチベーションに共感はできないです。

 

 結局、自己暗示の結果の好意だろうと、本心の中にある好意だろうと、それはどちらも冒険の中で培ってきた感情じゃないのよね。

 

 せっかくフローラと幼少期に合っていたというエピソードをわざわざ映画内でも採用したのだし、劇内でのふれあいはビアンカよりもフローラのほうが多かったのだから、本心とやらを認識したうえで、この旅の中で新しく生まれた感情を大事にしてほしかった。

 

 ゲームを外からプレイすると、フローラと結婚したらビアンカは一人で・・・とか、フローラと結婚するとおまけが沢山つくから・・・とか、どうしてもゲームキャラクターとして接すると、恋愛感情以外の面がノイズになって取捨選択に影響が出てくるわけだから、映画では、ゲームのキャラクターではなく、生身の人間として触れ合って、ビアンカとフローラどちらを選択するかしてほしかった。

 いっそ監督の好みで決めてしまえばよかったのに。

 

 

    中盤のドラゴンオーブの下りも、入手を回想で済ましてしまったのではぁ、そうですかと言う感じ。

   見逃していたらすみません。

 ドラゴンオーブが壊される下りありましたっけ?

 妖精なら直せるかも、と言う下りも唐突。

 ゲームにありがちなお使いイベントだとは思うのですが、もうちょっとスムーズに出来ないものか、とモヤモヤするんです。

 まぁ、テンションががっつり下がっている状態だったので余計かもしれませんが。

 

   賛否両論のクライマックスも、ビアンカフローラ問題の話でも少し触れましたが、斬新なのか陳腐なのかももはや問題ではないです。

 

 監督ご本人にとっては取って置きのアイデアであったようですが。

 そのアイデアを素直に受け止められない人がたくさんいるかもと思わなかったのだろうか?

 

 ファンは「ドラゴンクエスト5天空の花嫁」の映画を見に来たはずです。ドラゴンクエストと言うコンテンツの初めての、かどうかはわかりませんが、少なくともとても久しぶりの映画化です。

 皆無難に仕上げてくれることを望んでいたはず。意外性を求めるとしてもこの方向性ではなかったはず。

 

 なんだろう。

 求めていないのにサプライズ用意されてた感じ。

  根回しなしで。

 急にフラッシュモブが始まって、求婚されてカップルが分かれちゃうやつ
 
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 ドラクエファンは、こんな結末もちろん想定なんてしていないと思いますが、意外性があるのではなく、想定すらしたくなかったと思うんです。


 正直私が見るモチベーションとしては、今更ドラクエ5を最初からする元気ないから、映画で内容を知りたい。というところでした。
 ですので、何となく、エンディングが普通ではないという噂を聞いた時は
 「余計なことしないでドラクエ5のストーリーを楽しませてほしい」
 という感想しかなかったです。

 
 もしこのエンディングが多くの観客に受け入れられると思っているとしたら考えが甘すぎます。
 スターウォーズEP8が従来の世界観を否定するようなストーリーテリングをして新旧ファンの対立を生むほど大炎上したことを知らないのでしょうか?
 既存の、それもたくさんのファンを抱える作品に新しい概念・価値観を部外者が付与しようとすると、当然のことながら大きな反発が起きるのです
 
 
これが全うなドラゴンクエストの映画化でないことについて、作品内でもっと丁寧に伏線なり前振りなり張っていくべきだったと思うのです。

 

  伏線を全く張らない、だから全体的に説明不足。

 

 

  むしろ説明不足の理由をゲームだから、にしている感じがして不快です。

  ・ 幼少期がダイジェストなのもゲームの設定。
 ダイジェストという割にパパス死亡の下りは丁寧にやっているのがちょっと破綻してますけど。

  ・全体的にたんたんと進んでいるのも、いかにもなお使いイベントがあるのもゲームだから。

 ・シナリオというよりはぶつ切りのイベントの羅列を見せられている感じなのもゲームだから。上映時間≒プレイヤーの体感時間だから。

    特にここが一番不満で、映像にないだけでちゃんと時間が過ぎていると思っていたのが、実は全部吹っ飛ばされていたことなんですよね。

  子供が生まれるまでもぶつ切り、子供の成長もぶつ切り。奴隷時代も辛かったと言いつつスキップ。

  なんか、この設定で急に、感情移入できなくなってしまいました。

   ・自己暗示もゲームシステム。

   ・ビアンカを選んだのは中の人がビアンカが好きだから。

 

  取って置きのアイデアとやらを製作における様々な困難にたいする逃げに使っていないだろうか

 

 

  実はゲームの世界でしたとか、実は作られた世界でした。と言う作品は過去多々有りました。その中でも傑作はたくさんありましょう。

  個人的にはガーディアンエイトと言う漫画がお勧め。 
 ちょっと記憶がおぼろげなのでもう一度読み直したい

護衛神エイト 1 (ガンガンコミックス)

護衛神エイト 1 (ガンガンコミックス)

 

あと、まだ完結してない作品だと、ファイナルリクエスト、と言う作品が、ドラクエチックな世界観をベースにデータが破損していく世界を不気味に描いていて面白いです。

更新とまってますが…

 

Final Re:Quest ファイナルリクエスト(1)

Final Re:Quest ファイナルリクエスト(1)

 

 

  私が知ってる傑作たちは、既存作品だとその情報がノイズとなるのでオリジナルで、しかも何話も何作ももかけて丁寧に伏線を張っていってます。
 今回のようなアイデアについては、そうなっても仕方がないと、視聴者が感じられるような、世界に対する「違和感」を随所にちりばめないといけないと思うんです。
 
 例えばですけど、ゲマはミルドラースがコンピュータウィルスであることを知っていて、それでもなお、むしろ一層召喚しようと躍起になっているとか。
 そうでないと、なぜマーサだけが違和感に気づいているのかおかしいです。

 世界の違和感に気づいている存在を配置することによって、もっと序盤からただのドラクエ5ではないと気付く人には気づけるような、
 気づけなかった人も、思い返すとちりばめられた伏線に感嘆するようなそういったつくりにもできたはず。
 でも伏線はうまく機能しないと陳腐なものになります。
 正直、生半可な考えでチョイスしていいアイデアではなかった。
 と言わざるを得ません。


  それどころか、生半可な考えでこのアイデアを選んだんだろな。
 とすら、このアイデアの締めくくり方から感じてしまいます。

 

  ハッカーがウィルスを送り込んだ理由について、ウィルスが知る由もないのはその通りでしょう。
 なのに、ウィルスごときが創造主の思考を
 いやがらせだろうだのゲームが嫌いなんだろうなどと勝手に想像して、
 その上でプレイヤーに大人になれと言い放つ
 
 繰り返すけれども、ウィルスごときが。 

 

 創造主の意図についてウィルスは知らされてないわけですから、
 創造主の代弁者ですらないわけです。

 実はもっと遠大な目的がハッカーにはあったかもしれない。なかったかもしれない。

 そこはスタッフが触れる気がないので闇ですね。

 

 もし本当に正直いやがらせ程度の理由だとして、そんな理由で企業活動の阻害をするハッカーのほうがよっぽど子供だし、それの創造物が偉そうに大人になれといわれてもなに言ってんの?って感じです。

 

    また、リアルではハッカーに思想なんてないのかもしれないけれど、これはフィクションなので、であるならば、見た人間に成る程と思わせるような思想を、動機を見せつけるのが「物語る」仕事だと思うのです。。

    思想がないとしても、思想がないことが逆に重要なキーになるように周辺の設定で補強しないと、ちょっと動機作りをサボったな、と私は感じてしまいました。

 

 そしてそれに対する主人公の返しも正直ありきたりであまり心に響かない。
 
 挙句の果てに、スラリンが実はワクチンプログラムでしたー
 俺を使えー

 やった、勝利!

 って、もう、この一連のやり取りにまともなシナリオが存在していなくてげんなりです。

 こういう後出しのポッとで大っ嫌いです。
 


 ウィルスに対抗できるワクチンを事前に用意する前に、ウィルスが侵入できないようプロテクトかけとけや。

 普通事前にワクチンプログラムなんて用意できんぞ。とも思ったけど、それは重箱の隅をつつきすぎか。

 

 街に帰ればゲーム終了、ビアンカも息子も全部消えてしまうのも、魔王を倒して勇者は幸せに暮らしました。というまっとうなエンディングを望んでいた身としては無常観を感じてしまいます。


 この世界は終わってしまうけど、この思い出は本物なんだ!
 というポジティブなはずのメッセージがすごく空虚に感じてしまうんです。 


 書いていて、なんで私がこの映画にこんなに怒っているのかが解りました。

   私、映画を見るときはフィクションであると言うことを考えないようにしているんです。

   彼ら彼女らは過去があって、自分の意思で行動して、そして映画が終わっても未来が続いていく。

   だから、キャラクターの痛みもよりいっそう感じるし、理不尽に一緒に怒りを感じる。感情移入しすぎかもしれませんが、それが私の鑑賞スタイルで、だから、

  魔王を倒したあとも、困難がありながらも世界を復興して、一人息子も結婚をきっとするんだろうな。

  旅先で偶然フローラの子供と出会って、とか、そう言う展開ベタだけど好きだなぁとか

  そう言う余韻に浸りたいんですよ。

  想像が広がっていく世界を楽しむのが好きなんです。

 

   でも、あの世界はデータだ

 

と言い切られてしまった。

ゲームを追体験する、データだと。

 

彼ら彼女らも、プログラムに則って一定の行動をするデータで、そして、あのゲームクリアするとリセットされる。

あの世界は完全に閉じている。

わざわざこれはリアルだと「じこあんじ」しているところに、いいやフィクションだ。

と否定されたのが私がすっと冷めてしまった原因かもしれない。

   急に血の通ったキャラに見えなくなっちゃったんですよね…

 

  リュカを体験しているプレイヤーは感情移入できるほど情報量も多くないし、そこに感情移入したくてこの映画を見に来た訳じゃないしね。

  
 
    と言うことでまとめ


 奇抜なアイデアの一点突破にかけすぎて、丁寧なストーリテリング、奇抜なアイデアが必然と思えるような伏線、前振りづくり、そういうのがぜんぜん感じられない。

  ゲームの映画化について監督もインタビューで不安がっていましたが、やはり引き受けるべきではなかったと思います。

 

 もしかしたら5とは一言もいっていない、と言うかもしれない。ユアストーリーと言ってたじゃないかと、制作陣は思っているかもしれない。

 

 その通りかもしれない。
 でもそれは騙し討ちだと思うんです。

 

 だますこと自体は悪くないかもしれない
 でもだますなら、心地よく騙さないと。

 

 

 

 

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